2022年に一番話題になった映画といえば、「ONE PIECE FILM RED」の名前が一番に上がるのではないでしょうか。
そして、翌年の2023年3月からアマプラで定額利用することによって、「ONE PIECE FILM RED」一般公開されるようになりました。
「FILM RED」の中心人物であるウタは、演技を名塚佳織さん、曲をAdoさんが担当されており話題になりました。
とにかく曲が素晴らしいという声が多く、実際に「新時代」はティックトックでよく使われ、2022年はどこにいても流れていた印象があります。
本記事では、映画館ではなくスマホやテレビで落ち着いて「ONE PIECE FILM RED」試聴した結果、問題点や最高だったところをざっくりまとめてみました。
日本の最新鋭のミュージシャンを携え臨んだ本作ですが、まだまだアメリカのミュージカル映画に追いつけている実感は正直持てませんでした。
しかし、バトルシーンやキャラクターの見せ方については、日本のアニメーターの本気を見せつけられました。
はっきり言って「新時代」をみた時視聴を止めようと思った
「FILM RED」は、ウタがライブで大勢の観客を呼び、新時代という曲を歌うことで幕を開きます。
そのため、本作の一番中心の歌とも言える重要な楽曲なので、Perfumeの楽曲提供で有名な中田ヤスタカさんが作詞作曲されています。
しかし、実際に映画をみてみると、ウタの歌っている口の動きが曲と全くあっていないことが気になりました。
口の動きが合わないだけでなく、段々とダンスもワンテンポ遅れてポーズを決めるようになりますのでとても違和感を感じてしまいました。
口が合っていないだけでなく動きもずれる
新時代のウタのダンスは、perfumeのようなステップと多彩な手の動きが特徴的です。
TikTokなどを覗いてみると、ウタと一緒に踊ってみたという動画も数多くでてきます。
しかし、実際にウタがうたっているとこをみると、とにかくずれているように感じてしまうのです。
こちらのyoutube でもわかるように、ウタの口はパクパクとしか動いていません。
実際にうたっているというより、ただ口を開いたり閉じたり、少し笑って見せたりするだけです。
CGで動かしているからとかそういうわけではなく、口の動きに全く拘っていないことがわかります。
映画でも、ウタがうたっている後ろ姿から映像がはじまり、光の演出を酷使しカメラをぐるぐるまわし口が動いていないことがわかりにくくなっています。
顔を描きたくないのか、手をしょっちゅう顔の前で振り回します。
アナと雪の女王との比較
ウタが歌って踊っている場面に比べて、曲とエルサの動きと曲がぴったりと合っているのがわかります。
曲の動きに合わせて手から雪をだし、走ったりマントを脱ぎ捨てています。
さらに口の動きも歌とぴったり合っており、ウタの口の動きとは比べると多彩に動いていることがわかります。
エルサが歌っている場面に焦点を絞っているので、他の視点に切り替わらないのでエルサの心の動きが手にとるようにわかるのです。
日本はアメリカのディズニーからアニメを教えてもらい、お手本にしてアニメ作りをしてきたはずなのに、なぜミュージカル映画がつくれないのでしょうか。
ライブでよく使われる、爆発や光、音符の効果などがないと歌を聞かせられないのでしょうか。
口を隠してダンスの動きだけを追求した犬王
日本のアニメは口の動きは書けないなら、仮面をつけちゃったほうがいいんじゃない?
FILM REDと同年に上映された犬王は、能楽師の犬王が仮面を被って踊って歌います。
洗練されたダンスの動きと、カメラワークに集中した演出は見事でした。
歌に感情移入しようとすると突然次の場面に移行する
その曲もっと聴きたいと思っていたのに、突然切れてしまって、思わずええ?今いいとこだったのにと声が出そうになりました。
お、口の動き合っているなと確認できても、バトルシーンに移行したり歌の世界にいまいち集中できなかったです。
もともとONE PIECEはバトル漫画で、白熱した戦闘が見所ですが、歌を合わせることでどちらをみていいかわからなくなりました。
日本のトップアーティストから楽曲を提供してもらい、Adoさんの素晴らしい歌声にのせているのに、歌に入り込めないのはもったいないと感じます。
風のゆくえをサビで止めた…
ウタがルフィや赤髪海賊団の前で、風のゆくえをしっとりと歌い上げるシーンがあるのですが、曲の一番いいところで突然切られて別シーンに移ります。
演出上仕方ないと思うのですが、ディズニーと違って曲のみで話を展開させられないということがわかります。
歌って踊るウタの前を人が通る…影になっちゃう
作中で、ウタが襲ってきた海軍達を倒すために、ウタカタララバイという曲を歌って踊りながら観客を操り攻撃するシーンがあります。
妖艶な踊りをしてて、恍惚とした表情を見せるウタですが、なぜかその前を海軍達が乱闘を繰り広げます。
その乱闘は、ウタの後ろでもできるのではないでしょうか。
ひとりぼっちはいやだというウタが、どんな思いで歌っているのかもっとみたいとおもっていると、その姿は黒い影に変わってしまいます。
影は赤い口をあけて、歌をうたうのですが、手書きで書いたようなへろへろの口でもう少しどうにかならなかったのかと感じました。
しかし、ウタが海軍に向かって怒りの眼光を飛ばす姿にはどきりとしました。
口の動きは合っていないけど目の表情には力を入れていた
目は口ほどにものをいうとよく言いますが、ウタの目の表情は正にその言葉を体現していました。
ルフィが海賊嫌いのウタの前で、海賊王になるんだといった時の目の表情は、悲しさと悔しさがまじった複雑さを感じました。
その後の「逆光」という曲を歌う目は、ライトに照らされてぎらりと光るのですが、ルフィに対する怒りの強さがよくわかります。
ルフィを見下ろし、こんなことお前にはできないだろうと侮蔑の眼差しを向けています。
ウタの目が狂気に満ちていく演出が良かった
特に、ウタの切り札である「トットムジカ」という曲を歌う時は、それまでのウタとは別人のような狂気じみた目つきをしています。
口の動きなどはここでは置いといて、Adoさんの掠れた感情的な声に合わせて、ふかんからぐるりとまわりこむカメラワークを使いウタの狂気を表しています。
ディズニーとはまた違う表現ですが、歌う場面が上手く描けなくても、感情を爆発させてるということがはっきりとわかります。
後半からのウタの目の表情は、本当に多彩で、近年のアニメの中でも特に見所を感じました。
また、最後の曲を歌い上げるウタの目の表情は名塚さんの演技も相まって画面に釘付けになりました。
脚本が素晴らしい
「ONE PIECE FILM RED」は、最初は誰からも羨望の眼差しを向けられる大スターであるウタが、狂気に飲まれていく過程を初めて見る視聴者にもわかりやすく入り込みやすい脚本構成でした。
「FILM RED」の脚本家の黒岩勉さんは、「世にも奇妙な物語」でデビューし、「LIAR GAMEシリーズ」や「ONE PIECE FILM GOLD」を手がけています。
全体的にテンポがよく、物語に入りやすい構成で、後半の盛り上がりについては素晴らしかったです。
ウタの能力の最強設定はすごい!
可愛くて魅力的なウタが、最強の海賊や海軍達と張り合うのに、歌を使った戦法を使うというのはなかなか斬新ではないでしょうか。
今までのONE PIECE映画は、大きくて強そうな悪役が活躍することが多かったです。
しかし、今回はウタのキャラクター性と話の展開によって、普段はONE PIECEを読まない女性客も集めることができたのではないでしょうか。
老若男女受け入れやすい話の構成だったと感じます。
声優が豪華
もともとONE PIECEは有名声優を使いますが、「ONE PIECE FILM RED」では、一人一人の声優達が輝いていました。
久しぶりにONE PIECE を試聴したのですが、ルフィ役の田中真弓さんの幼いルフィの声も久しぶりに聴くことができて懐かしく感じました。
ウタの名塚佳織さんとてもよかった!
ウタを演じた名塚佳織さんの演じは、個人的にとても良かったと感じました。
作中のウタはネズキノコというキノコを食べて、だんだんと凶暴性を増していくのですが、中盤では凶暴性を抑えているのがよくわかりました。
また、ウタの辛い過去や、ルフィと楽しく遊ぶ場面も全力で楽しんだり泣いたりする演技は見事でした。
過去に名塚さんは、反逆のルルーシュのナナリー役など感情を露わにしない役も演じていますが、別人のようにウタになりきっていました。
津田健次郎さんありがとう!
本作では、ウタを育ててくれた音楽王国エレジアの元国王であるゴードンを、津田健次郎さんが演じてくれました。
津田健次郎さんといえば、イケメン役を演じられることが多いので、今回ゴードンのような男と合わないかなと感じました。
しかし、最後のウタに呼びかけるセリフは、切なく切なくて息が詰まりました。
どんな役柄も見事に演じる津田健次郎さんの実力に改めて感心させられました。
さいごに
「ONE PIECE FILM RED」を見て、正直な感想を述べてきましたがいかがだったでしょうか。
素晴らしい映画でしたが、もっと音楽を活かしたアニメが作れないと、いつまでもディズニーには日本のアニメは追いつけないのではと心配になりました。
しかし、ONE PIECEの映画を改めて楽しく拝見することができて良かったです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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