2023年12月は、数多くのアニメ映画が排出されましたが、スタジオポノックが製作した『屋根裏のラジャー』を鑑賞してきました。
鑑賞と同時に、ユナイテッド・シネマの会員登録を行ったのですが、カードのイラストを記念にラジャーに設定しました。
今回鑑賞してみて、その選択は間違っていなかったと実感させられました。
カードのイラスト同様の美しい世界観と、ノスタルジックな心を掻きむしってくるような作品でした。
本記事では、『屋根裏のラジャー』の見どころや、世界観についてまとめていければと思います。
屋根裏のロジャーのあらすじ
子供が寂しい時に架空の友達を作り、一緒に遊んだりする子供のことをイマジナリーフレンドと呼ぶことをご存知でしょうか。
『屋根裏のラジャー』は、イマジナリーフレンド(以下イマジナリ)のラジャーと、ラジャーを想像したアマンダとイマジナリの世界についてのお話になります。
アマンダは、父親が亡くなった悲しみから立ち直るため、ラジャーというイマジナリを生み出しましました。
二人は想像の世界で空を飛んだり、雪山を滑り降りたり沢山の冒険を楽しみますが、アマンダの母親リジーは事業が上手くいかず夫が残してくれた本屋を畳む準備をしていました。
そこへ、場違いなアロハシャツを着たミスター・.バンディングという男と、長い黒髪と黒い服をきた女の子が店に入ってきました。
リジーが黒い服の少女のことを気づいていないことを知り、ラジャーとアマンダは自分たち以外のイマジナリに会えたことに驚き喜びます。
全ての作業が終わったあと、リジーとアマンダとラジャーは、店と家の中で隠れんぼを始めました。
ラジャーとアマンダは、もう商品が少なくなった本売り場に隠れようとしますが、突然の停電で電気が消えてしまいます。
そこへやってきたのは、昼間にみた黒髪の少女でした。
少女はラジャーにとびかかり、ミスター・バンディングはラジャーを大きな口で飲み込もうとします。
間一髪のところで、ラジャーは飲み込まれずに済みますが、それから黒い少女とミスター・バンデットはラジャーを付け狙うようになります。
果たしてラジャーとアマンダはどうなってしまうのでしょうか。
キャラクター豊富!なんとなくピクサーを意識したノスタルジック感
『屋根裏のラジャー』は、英語圏の街が舞台になり、たくさんのイマジナリが登場します。
温かい色合いやタッチのなかに、どことなくリアルな質感をもたせる書き方は、まるでピクサーの映画のように感じました。
本作はもともとジブリから派生した、スタジオポノックで作られているので、絵柄はジブリのものと似ていますが、物語の雰囲気は少しずつ変わってきたなと感じました。
『屋根裏のラジャー』は子供の頃にあった懐かしい記憶や、いつの間にか忘れてしまった思い出を呼び起こすような映画になっています。
昔楽しく遊んでいたおもちゃが、今は興味がなくなってしまったけど、ふとその時のことを思い出してもう一度遊ぼうとする、そんなノスタルジックな雰囲気に溢れたアニメです。
イマジナリの設定が面白い
『屋根裏のラジャー』の主人公は、人間のアマンダではなくイマジナリであるラジャーなのですが、意外とラジャーは一人で何もできなくてそれが良かったなと感じます。
想像の産物であるにも関わらず、透明人間のようにものを通り抜けたりすることはできないので、窓やドアが開いていないと別の場所へ移動をすることができません。
基本的にものに触れることができないので、アマンダの後ろでさりげなくものをよけながら進んでいるのが、ラジャーのイマジナリらしさを引き立てます。
唯一彼が触ろうとしたものが、リジーがアマンダを思って流した涙で、その涙がラジャーの手をすり抜けて落ちて行ったのに悲しさと虚しさを感じました。
イマジナリの存在
イマジナリは、子供達の想像上の友達なので、子供達の想像力が乏しくなっていくとイマジナリは光の粒になって消えてしまいます。
しかし、そんなイマジナリでも生き続けられる方法があることを、ラジャーは同じイマジナリであるジンザンから教えてもらいました。
それは人間の想像力が詰まった図書館で生きることでした。
今までそこまで多くイマジナリをみてこなかったロジャーは、飛行士の姿をした少女エミリや、カバの小雪ちゃん、骨っこガリガリと友達になります。
図書館にいるイマジナリ達は、掲示板に浮かび上がってくる子供達の写真から、彼らの夢の中にはいることができます。
夢の中の子供は、自分が思い描いた世界や冒険を自由に想像しているので、その中でいろんな役割を担当し子供達と一緒に遊びます。
そして、夢の中で想像された食べ物(?)を図書館に持ってくることもでき、主人を無くしたイマジナリはそうやって自由に食べて飲んで楽しく過ごしていました。
帰る時は写真を持っていなくてはいけないのですが、写真から手放してしまうと、夢をみていた子供の部屋にワープすることになります。
図書館から離れたイマジナリは、早く図書館に戻らないと消えてしまうので、ドアの隙間などから抜け出て帰りを急ぎます。
Mr.バンディングの存在感
『屋根裏のロジャー』の悪役であるミスター・バンディングは大御所俳優であるイッセー尾形さんが演じており、明るい見かけとは裏腹に恐ろしい存在感がありました。
また、いつも傘の先でコツコツと音を鳴らしながら登場するのが、まるで時計の針が時間を刻んでいるようで、想像の世界から現実の世界に一気に引き戻されるような感覚になります。
大人であってもイマジナリをみることができ、さらにイマジナリ達に現実のつらさを見せつけたり攻撃したりする矛盾した人物でもあります。
そしてミスター・バンディングが、イマジナリの黒い少女に楽しそうに喋りかけているのをみると、ある一人の人物が思い浮かびました。
ミスター・バンディングは宮崎駿さん?
貪欲に想像力を吸収し、いつでもスクリーンに少女を描いてきた人物といえば、やはり宮崎駿さんを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
毎月三冊児童書を読み、想像力を吸収している宮崎さんですが、それと同時に映画がヒットすることに対しては常にストイックで現実的だったのではと思います。
本作では、巨匠宮崎駿さんとの決別の意味も含んだ映画だったのではと感じます。
母親でも感情移入できるストーリー
『屋根裏のラジャー』は、子供向けの映画ですが、大人でも十分楽しめる物語になっているのが良いなと感じました。
特に、アマンダの母親であるリジーが、過去イマジナリと慣れ親しんでいたのに現在は全くイマジナリをみることができないことが、大人達が共感できた点だと思います。
リジーがロジャーを無視して行動することで、ロジャーがより異質な存在に見え、ロジャーがいるにも関わらず扉を閉めようとしたり、ハラハラする展開が生まれました。
また現在の経済状況や子供の面倒に手一杯なリジーの姿は、子供と一緒に視聴にくる大人にとって共感の対象だったのではないかと思います。
『屋根裏のラジャー』は、ラジャーとアマンダを中心とした物語ですが、リジーの心の動きについても注目していると大人にとっては興味深いかもしれません。
イマジナリの戦いは劇場でみて欲しい!
ロジャーの創造主であるアマンダは、とても想像力が豊かで、星が降る草原や絵に描いたようなピンクの空、現実ではみることができない美しいものを想像します。
冒頭ではその美しい風景に感動し、思わず涙を流してしまう観客も多かったのではないでしょうか。
また、ロジャーとアマンダが雪山に突入する様子は、家の屋根がバラバラに壊され雪が吹き荒れる場面展開には驚かされました。
ただの想像の世界かと思えば、後半ではこの想像力を使った、ミスター・バンテッドとの戦いが始まります。
二人の想像力をふんだんに使った戦いは、コロコロと場面が代わり、テンポが早くまるでジェットコースターに乗っているかのようです。
この臨場感はぜひ劇場で多くの人に見てもらいたいです。
さいごに
スタジオポノックの新作『屋根裏のロジャー』のみどころについて語ってきましたがいかがだったでしょうか。
アニメの風景をみて涙したのは、映画『すずめの戸締り』以来で、とても感動させられました。
是非大きなスクリーンで見てもらいたいと思う作品です。
お時間とタイミングが合えばぜひ劇場に足を運んでみてくださいね。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
コメント