2024年、ディズニーは創業100周年を迎え、大きな節目を迎えました。
日本では12月15日に『ウィッシュ』と、同時上映『ワンス・アポン・ア・タイム』が公開されましたが、新作『ウィッシュ』の評価は芳しくありません。
今回6歳の子供と、4歳の知的障害のある子供と試聴してきたのですが、母親として子供にあまり聞かせたくないセリフがあって頭も抱えました。
本記事では、子供の反応も合わせて、ウィッシュのどこが悪かったのかを検証していきます。
子供達は楽しかったと言ってくれましたが、映画館にまた『ウィッシュ』を見に行こうという気分にはなりませんでした。
【ウィッシュ】のあらすじ
どんな願いでも叶う、マグニフィコ王が統治する国ロサス王国では、誰でも18歳になると王に願いを託さなくてはいけませんでした。
その日は、主人公のアーシャがマグニフィコ王に弟子入りを志願する日で、アーシャの祖父の100歳の誕生日で願いを叶えてくれる日でもありました。
王に願いを託すと、自らの願いを忘れてしまうので、アーシャの祖父は願いが叶うのを心待ちにしており、アーシャもマグニフィコ王に祖父の願いを叶えて欲しいと頼むつもりでした。
弟子入りの面接の際に、アーシャは祖父の願いの入ったシャボン玉をみつけ、その願いがとても素敵だったのでマグニフィコ王に是非叶えて欲しいと頼みます。
しかし、マグニフィコ王は「その願いは国に危害を与えるかもしれないから叶えることができない」といいます。
以前、強盗によって家族を殺されてしまったマグニフィコ王は、王国の脅威になりそうな願いは、叶えずにいたことをアーシャは知ってしまいました。
アーシャはみんなの願いを叶えたいと、亡くなった父との思い出を思い浮かべながら歌をうたうと、空から不思議なスターがやってきました。
アーシャはスターと、相棒の小やぎバレンティノと力を合わせて、マグニフィコ王からみんなの願いを取り戻そうとしますが…。
ストーリーが短絡的すぎる
『ウィッシュ』のあらすじについて、簡単に説明しましたが、子供のみる映画なのでこのようなシンプルなストーリーラインで十分かと思います。
しかし、ディズニー映画はシンプルなストーリーラインに、必ず驚きや感動を添えて子供達を楽しませてきました。
『ウィッシュ』については、驚きと感動を全く感じず、すんなりと最強の魔法使いマグニフィコ王を倒してしまいました。
マグニフィコ王の妻であるアマヤ王妃も、序盤はとても仲睦まじかったのですが、彼が悪の力に手を染めてしまうと一変してクーデターに手を貸すようになってしまいました。
今までのディズニーでは、カップルや仲間がお互いを思い合う展開が多かったですが、本作では「分かり合えなかったらもう反旗を翻すしかない!」というメッセージが強かったように感じます。
そのため、辛い過去を持ったマグニフィコ王が、国民全員から裏切られてしまい、逆にかわいそうに感じてしまう視聴者の声が多かったです。
子供の観る映画で「革命」を歌うな
今回子供達と一緒に吹き替え版『ウィッシュ』を鑑賞したのですが、子供達は楽しそうに鑑賞してくれました。
しかし、親としてはもうこの映画を率先して子供に見せないと思います。
なぜなら、この戦争が至る所で起こっている世の中で、簡単に主人公達が「革命」という言葉を口にしたからです。
しかもノリノリの笑顔で、楽しそうに歌いながら「革命だ!」と叫ぶのをみて、その言葉の恐ろしさと複雑性を全く理解しているように見えませんでした。
過去にもディズニーのキャラクターが「革命」という言葉を口にしたことは、もしかしたらあるかもしれませんが、ここまであからさまに肯定させるような作品は私はお目にかかったことがありません。
キャラクターが貧弱
ディズニー映画は、日本のアニメ映画以上にキャラクターを描くことを重視しています。
シーンごとに映像を作る日本アニメと異なり、ディズニー映画ではキャラクターごとに担当がつき、一人一人のキャラクターを丁寧に描きます。
そのため、たくさんのキャラクターが登場する映画は、そのぶん担当が一人ずつついていると言っても過言ではないので、より制作費がかかります。
ディズニー映画で一番制作費がかかった『塔の上のラプンツェル』などをみると、そのキャラクターの多さに驚かされます。
一方『ウィッシュ』でもたくさんのキャラクターが描かれていますが、従来のディズニーとは異なり一人一人のキャラクターが凡庸になってしまったのが残念でした。
ディズニーはキャラクターが命だったはずなのに…

『ウィッシュ』を見た6歳の娘は、「スターちゃんかわいい!」と言っていましたが、それ以外に子供の心を掴みそうなキャラクターがいません。
確かにスターはとってもかわいいキャラクターですが、喋らないでイタズラしているばかりなので、いまいちインパクトにかけると思いました。
オラフのように、子供の興味を一心に惹きつけてくれるキャラクターがいればいいのですが、バレンティノにしてもつまらない冗談をいうばかりで魅力的ではありません。
どのキャラクターも個性が貧弱で、逆に悪役のマグニフィコ王のキャラクターが妙に際立ってしまいます。
群衆に個性がない
さらに、ロサス王国の住人達も、皆同じような服装で同じような髪型で、さらに動きも表情もぎこちなくいきいきしていません。
群衆で歌って踊るシーンなどは、主人公のアーシャに合わせてただ踊っているだけで個性というものを感じません。
先述した『塔の上のラプンツェル』でラプンツェルとユージーンが街で踊るシーンや『美女と野獣』でベルが本を読みながら街を歩くシーン、『ノートルダムの鐘』のTopsy Turvyを見返して欲しいです。
全てのキャラクターが生き生きと踊り、個性があり楽しんでいるのは、一人一人のキャラクターをアニメーターが端正込めて描いていたからです。
しかし、『ウィッシュ』の群衆はただの主人公の引き立て役で、それ以上でもそれ以下でもありません。
全盛期のディズニーを知っている立場からすると、とても悲しくなってしまいました。
作画が残念すぎる
SNS上では、『ウィッシュ』の作画が良くないと話題になっていましたが、本当にその通りで自信がないのか引きの絵が多かったように思います。
特に、ディズニー映画で必ずと言っていいほど登場する馬での滑走シーンですが、あまり足が映らないようにしていたり遠くから走っているところしかみせていませんでした。
また、アーシャはドレッドヘアーで、髪は靡かないはずなのですが、毛先の方だけさわさわと揺れていてなんだか不思議に思いました。
全体的な動きが本当にぎこちないので、歌を歌っていないシーンは子供には退屈そうにみえました。
娘は、楽しいとは言ってくれましたが、椅子からずりずり落ちてみたり、息子は歌のシーンはノリノリですが最後はぐっすりと眠っていました。
ちなみに息子は、『しん次元!クレヨンしんちゃん the movie 超能力大決戦』では最後まで眠らずに試聴しています。
動物を描いたらピカイチだったディズニーが残念なことに
その昔、ディズニーは作業所に小さな動物園を作り、動物達を観察しながらアニメを描いていました。
動物をよく観察しながら描いた『バンビ』は、動物達の動きは生き生きとしていて、高く評価されました。
また、『ライオンキング』や『ジャングルブック』『ダンボ』など、動物たちを描いた素晴らしいアニメを世に送り出してきました。
しかし、『ウィッシュ』の動物達の動きは、完全に短略化されていて動物らしさが感じられなくなってしまいました。
過去の名作をオマージュした動物キャラクターが登場しましたが、泣いて謝りたいほどその動きは過去に描いてきたものと比べられないほどでした。
もうディズニーには、人間も動物も描くことができないのでしょうか…。
歌もサビしか心に響かない
『ウィッシュ』を鑑賞後、作中でいろいろな楽曲を聞いてきましたが、心に残る歌はサビしか覚えていないことが悲しかったです。
過去のヒット作である、『アナと雪の女王』では、子供達が劇場で大合唱するという社会現象が起きました。
しかし、『ウィッシュ』の場合は、おそらく大合唱になる可能性は少ないのではと感じます。
帰り道に娘とウィッシュの歌を口ずさみましたが、お互い「次はなんだっけ?」といいながらサビばかり歌っていました。
あえていうなら、福山雅治さん演じるマグニフィコ王が歌う「無礼者たちへ」がよかったかなと思います。
ミュージカル映画で一線を走っていたディズニーですが、いささか肩透かしをくらったようでした。
ストーリーや作画は微妙でも、きっと歌は良いはずと思っていましたが、そちらのほうでも力不足を感じてしまったことが残念でした。
さいごに
『ウィッシュ』を子供と一緒に鑑賞しましたが、反応は悪くないものの退屈している場面も多々あったことは事実です。
また、思想的な面が顕になっているので、親としてはもう一度『ウィッシュ』を鑑賞させることはないと思います。
子供の頃からディズニー映画と慣れ親しんできましたが、今回子供に心からおすすめすることができなくて非常に残念で悲しいです。
ディズニーの今後の作品が、もっと酷くならないことをひたすら祈るばかりです。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
コメント
妻に裏切られて逆に可哀想だとかじゃなくて
そもそも悪い事なんもしてなかったのに意味の分からないイチャモンで酷い目にあわされて可哀想が正解ですよこんなの…
悪役って主人公の方でしょうどう考えても
コメントありがとうございます。
マグニフィコ王は、国をよくするために必死に考えて行動していましたが、少々一人で全てを背負いすぎたと感じます。
そんな彼が人道から外れてしまったとき、一番に支えられるのは妻であるアマヤ王妃でしたが、あっさりと手のひらを返してしまったことに愕然としてしまいました。
そのため、王妃がひどいと書いてしまいましたが、少し語弊があるかもしれないので書き直しておきますね。
魅力的な悪役は必要ですが、悪役が正しいように見えてしまう描き方をしてしまったことは、ディズニーがもうストーリーを上手く作れる人がいないのではと疑ってしまいます。