番宣を一切行わず、事前情報を明かさずに上映された映画「君たちはどう生きるか」は、SNSでは「意味がわからなかった」「つまらなかった」という意見が多く出回りました。
物語にはストーリーの流れはあるのですが、驚くほどにオチがつかず、ぼんやりと幕を閉めてしまうので「一体あのアニメはなんだったのか」と思う視聴者が多かったのではないでしょうか。
今回、「君たちはどう生きるか」を二回視聴したのですが、この物語は不思議な国のアリスと同じような物語の構成をしているのではいかと考えました。
なぜなら、眞人の母親である「ヒミ」の存在や世界観に焦点をあてると、あの世界がアリスが夢に見た不思議な世界にそっくりであったことがわかります。
本記事では「君たちはどう生きるか」をよりわかりやすく鑑賞するために、不思議の国のアリスとの類似点などをネタバレありでまとめていきました。
本作を不思議の国のアリスのように、物語の山なし、オチなし、夢オチと考えるとどこかしっくりくるのではと感じます。
不思議の国のアリスとは
不思議の国のアリスとは、1865年にイギリスの作家ルイス・キャロルによって書かれた児童文学です。
アメリカのアニメ会社ディズニーによって映画化されましたが、一番最初に発行された名前は「地下の国のアリス」でした。
アリスという少女が、白いうさぎを追って地下世界の不思議な国に迷い込むというお話ですが、地下に降りていくという点で「君たちはどう生きるか」と似通っています。
個性的なキャラクターに会ったり、理不尽な目にあうアリスでしたが、それは全部ただの夢であったことが最後にわかります。
今まで、ジブリのアニメは物語の中で何かが起こり、その問題に対処し解決するという構成でした。
しかし、映画「君たちはどう生きるか」は「不思議の国のアリス」のように、異世界に行ってただ現実に戻ってくるだけというお話です。
そのため、この物語で何を伝えたかったのかわからないという人が多くなったのではと感じます。
母が残した本を読んだ後に地下の世界へ行く
「君たちはどう生きるか」の主人公である眞人は、新しい家と学校で居場所がなく、鷺男からの呼びかけにどうすればいいか悩んでいました。
そして、鷺男を倒すために矢と弓作りに励んでいたところ、ふと死んだ母親が眞人に残してくれた本を手に取ります。
眞人は映画と同名の本を読みながら、涙を流し、叔母の夏子が森に入っていくのをみてもさらに読み進めていきます。
ここまで、眞人が夢中で本を読んだ理由は、この本を読むという行為が不思議な世界に行く前座だったからです。
異世界と本は繋がっている
不思議の国のアリスは、もともとルイス・キャロルがアリスという女の子に聞かせた物語でした。
また、アリスも不思議な国に行く前には、一緒にいた姉が本を読んでいて「挿絵のない絵本に夢中になるなんてつまらない」と、アリスは退屈になってその場を離れます。
以上のことから本を読むことは、地下の国へ行く鍵なのではないかと推測します。
鷺男は不思議の国のアリスではうさぎ
「君たちはどう生きるか」では、鷺男が眞人を母親がいるという地下の国へ誘い出します。
鷺は翼は大きく、嘴は長く鋭く、足も長くて生々しいので不思議の国へ連れていく案内役としてはぴったりだったのでしょう。
嘴から小男が出てきた時には、驚いたという人もいるかもしれませんが、実は鳥の下に人間が隠れているというキャラクターは不思議の国のアリスでも登場しています。
左のドードーの鳥の翼の下には、人の手が見えていて、中に人が隠れていることがわかります。
手は人間で、鳥の皮を被り、足は鳥のままだというビジュアルはどこか鷺男に似ています。
また不思議の国のアリスでも、鳥キャラクターが沢山出てくるところが似通っており、出番は少ないですがインコやペリカンなども活躍します。
眞人が落ちていった地下の世界
「千と千尋の神隠し」や「ハウルの動く城」など、今までのジブリ映画では登場人物が飛ぶシーンが数多くでてきましたが、「君たちはどう生きるか」では人が飛ぶシーンはほぼありません。
事前情報がなかったときに、「君たちはどう生きるか」がどんな映画になるか予想しましたが、空を飛ぶシーンが絶対あると思っていたので予想外でがっかりしました。
地下世界への行き方も、カエルが大量に出てきたり、地面が沼のようになりずぶずぶと引き摺り込まれていきます。
地面に呑まれた後には、眞人は海の中をゆっくりと降りていくような描写になりますが、幻想的で美しい風景なのでぜひ映画館で見てみてほしいです。
地下世界に行くには洞穴を通る
眞人が自分から地下世界に行くためには、不思議の国のアリスのように洞穴をくぐって行くことになります。
これは、ジブリ映画「となりのトトロ」でも同じですが、不思議の国のアリスの影響も受けているように感じます。
地下世界は、死ぬ前の走馬灯でもあり、人間の創造世界でもあります。
地下世界を変えられるのは人間だけ
人間たちは、地下世界に潜ってしまった場合は、城の中の扉を開けて元の世界に戻ることができます。
だからある意味出入り自由ではあるのですが、わらわらが飛ばなくなってしまっていたり、ペリカンが空を飛べなくなってしまったり色々な問題が起きているようです。
地下世界が危機に瀕しているため、まず眞人の母親であるヒミが地下世界に呼ばれましたが、ヒミの力を使っても問題を解決することができませんでした。
そのため、時空を超えて鷺男は今度は眞人を地下世界に呼び、叔母を連れ戻すと同時に世界を変えるための冒険が始まったのです。
ヒミの服装と境遇は不思議の国のアリスそっくり
眞人の母親であるヒミが、地下世界で姿を表した時、母親の姿ではなく少女の姿で現れたことに驚いた人は多いのではないでしょうか。
まさか、母親が少女の姿になって、子供の前に現れるだなんて予想できないですよね。
気になったところは、戦前を生きた眞人の母親が、イギリスの少女のような洋服で現れたことです。
ヒミの姉妹であるナツコ(眞人の叔母)は、美しい着物を着ているのに対し、ヒミは可愛らしい裾の広がったスカートを着ています。
ヒミは火を使うからなのか、赤い服になっていますが、膨らんだパフ袖や白いエプロンはどこか不思議の国のアリスを連想させられました。
地下の世界に入り浸ったアリス
「君たちはどう生きるか」のヒミは、境遇も服装も不思議の国のアリスそっくりであることがわかりました。
アリスは、不思議の国でただ慌てるだけで、周りに翻弄され続けますが、ヒミは地下世界で火の能力を手に入れ縦横無尽に暴れ回ります。
それと同時に、ヒミは人間世界へ帰れなくなっているので、眞人は彼女を連れ帰る役目を任されます。
ヒミの家
眞人が、わらわらの住んでいる島を離れ、鷺男とともにヒミがいる家にやってきました。
ヒミが住んでいる古屋は、どこかイギリスの田舎の家のようで、中には大きなインコが迷い込んだ人間を食べようと待ち構えていました。
二人のお茶会
食事シーンが印象的なジブリ映画ですが、「君たちはどう生きるか」でも、ヒミと眞人が一緒にジャムを塗ったパン食べるシーンがあります。
人間世界では、ご飯を美味しくないと言った眞人でしたが、ヒミがジャムを塗っただけのパンは目を輝かせて美味しいといいました。
ヒミはカップにお茶を注ぎ、皆にパンを褒められると話しますが、二人でパンにジャムを塗ってお茶を飲むのはなんだか不思議な国のアリスのお茶会に似ているように感じます。
無邪気でかわいい
本来母親というのは、落ち着いていて包容感がありますが、ヒミの弾ける笑顔や目つきは少女そのものでした。
宮崎駿監督は、遺作といわれた本作で「折角だから理想の少女」を描きたいと思ったのかもしれません。
その理想の少女のモチーフとして、アリスが選ばれたのかもしれませんね。
なんでも知っていて、自分の存在を信じて疑わず何が起きても大丈夫だと先へ進めるのは、彼女がアリスとしての役割も持っているからなのではと感じます。
さいごに
映画「君たちはどう生きるか」と、「不思議の国のアリス」を比較してきましたがいかがだったでしょうか。
「君たちはどう生きるか」を冒険活劇としてではなく、「不思議の国のアリス」と同じように山ナシ、落ちナシ、夢オチと捉えて肩の力を抜いて鑑賞すれば、面白いと感じることもできるかもしれません。
引き続き「君たちはどう生きるか」についてブログで考察しますので、もしよかったらまた覗いてもらえると嬉しいです。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
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