ピクサーの最新映画『マイエレメント』は、2019年『アナと雪の女王2』以来のヒットを叩き出し2023年の夏に映画ファンの間で大きな話題を呼びました。
アメリカでの公開初日の興行収入は、『バズ・ライトイヤー』を下回る1100万ドルでしたが、SNS上の口コミなどの評価が高かった事で最終的には4億ドルを上回る興行収入を達成しました。
日本でも、欧米よりも2ヶ月遅れて8月4日に公開されましたが、映画レビューサイトの評価は星3.8から4と高評価を記録しています。
本記事では、実際に映画『マイ・エレメント』を観てきた感想や見どころをネタバレありで語っていきます。
爆死と言われた『マイ・エレメント』が、起死回生を果たすことができた理由について探っていきます。
映画【マイ・エレメント】のあらすじ
エレメントシティには、火・水・土・風のエレメントを持つ住民達が、それぞれの文化に合わせた生活を送っていました。
他のエレメントよりも遅れて移住してきた、火のエレメントのバーニーと妻のシンダーは、住居先を確保できなかったり「火は近づくな」と不当な扱いを受け傷つきます。
それでも二人は協力し、火のエレメント専門店「ファイアプレイス」を立ち上げ、やがて一人娘のエンバーを授かります。
エンバーは「ファイアプレイス」の跡を継ぐために、幼い頃から店を手伝いますが、接客が苦手で癇癪で爆発を起こしてしまうことが悩みでした。
そして、初めて店番を一人で任されたセール日に、エンバーは自分の癇癪を収めるために地下に逃げ込みそこで爆発を起こしてしまいます。
爆発によって水道管が破裂してしまい、地下室には一気に水が流れこみましたが、その中には水のエレメントのウェイドまでも入り込んでいました。
エンバーとバーニーが微笑み合う写真をみて、つい先日父親を亡くしてしまったというウェイドは、エンバーがいるにも関わらず号泣してしまいます。
今まで水のエレメントと関わるなと言われてきたエンバーですが、次第にウェイドの優しさに惹かれていくことになるのです。
監督は韓国のルーツを持つピーター・ソーン監督
映画『マイ・エレメント』のピーター・ソーン監督は、両親が韓国からの移民であり、その経験が『マイ・エレメント』にも大きく影響していると語っています。
確かに、エンバー達はハングル似ている文字を使っていたり、日本語もそうですが名前が発音しにくいと言われる描写もありました。
そして、韓国以外の移民もそうですが、同じ出身地同士で結束し助け合い小さな街を作ることは世界各地でみられることです。
エンバーも、火のエレメントの街から出ることなく過ごしていたと話していましたし、同じコミニティーに属していれば不自由を感じることはなかったのかもしれません。
しかしピーター・ソーン監督は「自分とはタイプが違う人と出会えると、今までの世界が大きく変わり、たくさんの可能性に出会えることを映画を通して伝えたかった」そうです。
どんなエレメントでも分け隔てなく仲良くなれるウェイドは、エンバーの世界を大きく変え、彼女の隠れた才能を見つけ出しました。
恋の始まりを丁寧に生き生きと描く
映画『マイ・エレメント』は、異なる性質を持った二人が出会い、恋に落ちていく様子をこれほどにないくらいに繊細に描いています。
最初はエンバーは、ウェイドが「ファイアプレイス」の設備に違法があると報告したことで、廃業の危機に陥ってしまいウェイドのことをよく思っていませんでした。
しかし、ウェイドが他人の心情や気持ちに寄り添い、心を開くことに長けていることを知ります。
ウェイドはエンバーの魅力にいち早く気づき、一生懸命アプローチし、エンバーはウェイドの優しさにふれることで好意がどんどん増していきます。
二人のやりとりを丁寧に描くことで、じわじわと二人の仲が睦まじくなっていく様子が本当に微笑ましいので、ぜひ劇場で見てもらえればと思います。
生き生きとしたキャラクター描写
ピクサーやディズニー作品は、キャラクター描写がしっかりしていますが、『マイ・エレメント』もそれぞれのエレメントを活かしたキャラクター描写が見事でした。
エンバーのゆらめく炎は、元気が無くなると小さくなり、気合いを入れると大きく燃え上がります。
そして、癇癪をしょっちゅうおこしている様子をみると、こういう女の子いるよねと深く頷いてしまいました。
また、ウェイドはとても泣き虫で「羽が折れた蝶」という言葉を聞くだけで大量の涙を流したり、エンバーのそばにいると微かに沸騰したりする描写がよかったです。
二人が一緒にいると、ウェイドがさりげなくエンバーに水がかからないように、腕で水を払ってくれたりキュンキュンできる場面も多いです。
ウェイドは、「ファイアプレイス」が廃業しないように、上司のゲイルとの仲を取り持ってくれたりへらへらしながらもやる時はやる男気があります。
そんなウェイドの優しさに触れることで、エンバーも自分の癇癪の原因や本当の気持ちに気付くことができた時は感動しました。
ウェイドとエンバーの家族の形
ウェイドとエンバーの家庭は、裕福であったり住む場所が違ったりと、一見異なるように見えますがお互いの家族をとても大事にしている点は合致しています。
エンバーは、父親のことをとても大切にしているし、ウェイドは父親を亡くしていますが親戚と度々パーティーをしているようです。
また、話には直接関係ありませんが、木のエレメンツがリンゴを摘み合いっこしたり、みんな愛の示し方に個性があるのは素敵です。
移民のエンバー
エンバーの家族は、故郷を離れざるを得なくなり、エレメンタルシティに移住してきました。
先祖代々伝わる青い炎を大切にしており、エレメンタルシティに住みながらも、他のエレメントと仲良くしようとすることはありませんでした。
父親のバーニーは、根っからの商売人で客対応も上手いですが、体調が悪く店をエンバーに引き継ごうと考えています。
炎のエレメンツのお客だけを受け入れており、店をエンバーに譲る時も身内を集めて盛大なパーティーを開催しています。
母親のシンダーは占い師で、店に来た客の相性を占っってあげたり、恋をしている時の匂いを嗅ぎ分けることができます。
シンダーは、水のエレメントのマンションコンシェルジュに喧嘩を売ったり、エンバーやバーニーと同じく血の気が多いところがあります。
裕福な家庭のウェイド
ウェイドは、市の検査官として働いていますが、お世辞にも仕事ができる訳ではなさそうです。
しかし、彼の家は裕福で芸術家の家系であり、エレメンタルシティの一等地にマンションを持っています。
お金の余裕は心の余裕なのか、お調子者で周りを巻き込んで場を和ませることができ、エンバーが火のエレメントにも関わらず家族パーティーに招きました。
ウェイドの家族も、エンバーが炎だからといって意地悪をすることはなく、とても優しく接してくれました。
火と水の美しい3Dアニメーション
今までのピクサー作品は、『トイストーリー』はおもちゃ、『カーズ』は金属と固形で変わらないものでしたが、『マイ・エレメント』のキャラクターは常に変化する体を持っているので表現するのが大変だったと語っています。
特に、ウェイドの書き分けはとても苦労したそうで、顔の形のプロトタイプを作り表情を観察したそうです。
変化する姿形
『マイ・エレメント』では、キャラクターの動きや感情によって常に変化し、特に火・水・風は変幻時際に姿形を変えることができます。
エンバーの炎は、近くでよく見ると透明で、何かが燃えているわけでなく彼女自身が炎で常にゆらめく体を持っています。
ビルとビルの隙間に入ったり、ウェイドに関しては、水の中に紛れ込み鍵穴などの小さな穴から水になって出てくることもあります。
そのため、生きているウェイドという水の体と、命を持たない水と注意して描き分けていたそうです。
そしてウェイドの体は彼の感情によって、常にぷるぷると形を変え、光があたる反射までも計算され描かれているのです。
ウェイド役の玉森裕太さんがよかった!
今回吹き替え版で、「マイ・エレメント」を鑑賞したのですが、ウェイド役の玉森裕太さんの演技が良かったです。
おどけたり、優しく声をかけたり、感情表現豊かなウェイドでしたが玉森さんが臨場感たっぷり演じてくれることでいきいきとしていました。
さいごに
口コミで高評価だった「マイ・エレメント」でしたが、鑑賞して本当に良かったです。
誰かに出会って恋をして、自分の中でいろんな喜びや可能性を発掘できたことを思い出すことができました。
恋人やパートナーと一緒に観ると楽しく見れるのではと感じます。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
↓参考にさせていただきました。にっしーさんの動画は興行収入について詳しく説明してくれています
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