【エクソシスト信じる者】アメリカでも日本でも酷評されてるのはなぜ?解説していきます!

【エクソシスト信じる者】アメリカでも日本でも酷評されてるのはなぜ?解説していきます! エクソシスト信じる者

1973年にホラー映画の代表作として大ヒットを果たした『エクソシスト』は、2023年12月1日に新作『エクソシスト信じる者』が日本でも公開されました。

本作は、2018年からハロウィンシリーズを監督しているデビット・ゴードン・グリーンがメガホンをとり、『エクソシスト』のリーガンの母親であるリンダ役を務めたエレン・バースティンが登場することで話題を呼びました。

首位デビューを果たしたものの、酷評が目立つ本作は、興行収入2780万ドルと予想を下回る滑り出しでした。

視聴者を驚かせたのは、おそらく前作ではカトリックの悪魔祓いをメインで行ったのに対し、本作では複数の宗教のスペシャリスト達が力を合わせて悪魔祓いを行ったことでしょう。

カトリックやプロテスタントの宗派が多いアメリカでは、悪魔祓いの儀式に、黒魔術と呼ばれたルートワークのドクターを呼んだのには驚いた人も多かったことでしょう。

本記事では、複数の宗教の価値観を大事にした『エクソシスト信じる者』をより楽しめるよう解説していきます。

【エクソシスト信じる者】のあらすじ

写真家のヴィクターは、臨月の妻ソリーンと仕事の都合でハイチに滞在している時、大地震にあってしまいました。

大怪我を負ってしまったソリーンは、最後に赤ちゃんを守ってとヴィクターに伝え、ヴィクターは泣く泣くソリーンの治療を諦め赤ちゃんを助けることを選びます。

10年後娘のアンジェラは、亡くなった母親に対する興味が増していき、やがて降霊術に興味を持つようになりました。

父親に嘘をつき、親友のキャサリンと一緒に森で降霊術を行い、そのまま二人は3日間行方不明になってしまいました。

自宅から遠く離れた場所で見つかった二人は、森の中を2〜3時間歩いていたら道に迷ってしまったと言い、周囲の人間を驚かせました。

病院で保護され身体検査を終え、足のただれ以外は異常がなかった二人ですが、次第に様子がおかしくなっていきます。

ヴィクターはアンジェラを救うため、今まであえて避けてきた牧師の友人や隣人を頼り、悪魔祓いの儀式を行うことを決意します。

悪魔祓いの儀式中、悪魔は「一人が生き残り、一人が死ぬ。どちらを選ぶ?」と双方の両親に問い掛けます。

悪魔に憑かれた少女達の演技が素晴らしい

『エクソシスト信じる者』は、悪魔に憑かれた少女達の演技が素晴らしく、メイキャップについてもリアリティがあり恐ろしかったです。

ごく普通の少女だった二人が、徐々に悪魔に蝕まれていく過程が視聴者にわかりやすく演技してくれて、感情移入がしやすかったと思います。

本作の物語や展開に納得がいかない人は多いですが、演技は良かったという声もありました。

アンジェラ役のリディア・ジュエットと、キャサリン役のオリヴィア・オニールは、放課後や休日の限られた時間で、二時間のメイキャップを施された後、監督の期待を超える演技を見せてくれたそうです。

アンジェラ役のリディア・ジュエット

『エクソシスト信じる者』では、主にアンジェラとヴィクターの二人を中心に話が展開していきます。

アンジェラ役のリディアは、『ワンダー君は太陽』でも良い演技を見せてくれましたが、『エクソシスト信じる者』でも少女の二面性を見事に演じてくれました。

ヴィクター役のレムリー・オドム・ジュニアさんとリディアの掛け合いは、本当に長年連れ添った父子家庭そのもので、二人の愛情が手にとるようにわかりました。

冒頭は父親思いの娘を自然に演じ、行方不明から戻った後は、少しずつ悪魔に憑かれておかしくなっていく過程を繊細に見せてくれました。

特に、病院から戻ってきた夜、部屋が突然暗くなってすぐに明るくなった時、ヴィクターのいる洗面所に瞬間移動をしてくるシーンには驚きました。

虚空を見つめ、目線だけで悪魔の存在を匂わせる演技は、十代という若さでありながらも見事だと感じました。

キャサリン役のオリヴィア・オニール

アンジェラの親友のキャサリンは、あまり家族に対するエピソードがありませんでしたが、映画ポスターにも使われている教会のシーンは危機せまるものがありました。

EXORCIST BELIEVER
引用:映画『エクソシスト信じる者』公式サイトhttps://exorcist-believer.jp/

厳格なプロテスタントの家庭で育ったキャサリンは、失踪後であるにも関わらず、日曜礼拝に連れて行かれて皆の前に姿を晒されなくてはいけませんでした。

本来なら、意識の混濁のあったキャサリンを人の多いところに連れていくのは良くなさそうですが、両親は教会でのコネクションを優先しました。

聖餐中様子がおかしかったキャサリンは姿を消したと思ったら、聖餐で使われたであろう葡萄酒(?)を服に浴び「キリストの血と肉ってなんだよ!」と叫びます。

彼女の演技は映画を視聴後も、心の中で引っかかり続けました。

あの苦しそうな声は、模範的なクリスチャンの娘として過ごさなくてはいけなかったキャサリンの心の叫びだったんじゃないかと思います。

その思いが悪魔の力とシンクロしていき、やがて正気な時間が保てないほど、悪魔に体を乗っ取られてしまったのではと推測します。

宗教観を超えた悪魔祓い

ヴィクターは、妻のソリーンを失ってから、アンジェラとの生活に籠り、周りの人間と関わりすぎることを拒んでいました。

隣人のアンは、ヴィクターにゴミ箱を家に入れるように言いましたが、ヴィクターは彼女の訴えを軽く聞き流していました。

ペンテコスト派の牧師で友人であるスチュアートは、礼拝に来るように言ったり、強引にルートドクターを連れて家に押しかけましたが、ヴィクターをいつも心配していました。

今まで宗教に頼ることを諦めていたヴィクターですが、大切なアンジェラが悪魔に憑かれてしまったことで、周りに助けを求め信仰に頼ることを決意します。

『エクソシスト』でリーガンの母親であるクリスを演じたエレン・バースティンは、本作では宗教家として活動しており「全ての宗教には共通した認識がある」と重要なセリフを口にしています。

また、クリスは悪魔に憑かれたキャサリンと対話するシーンがあるのですが、緊迫感あふれる演技をみせてくれました。

堕胎を経験したシスターのアン

ヴィクターの隣人であるアンは、看護師として働いていましたが、実はシスターを志していた時期があったことが作中でわかりました。

しかし、シスターとしてあるまじき行為をしてしまい、子供を堕胎してひっそりとシスターの道を断念しました。

カトリックにとっては、堕胎は許すことができない大罪であり、十戒でも人を殺してはいけないと記されています。

そんな彼女が、悪魔祓いの儀式の輪の中に入ることは、キリスト教を信じる人にとっては許されざる行為に見えたかもしれません。

しかし、アンはヴィクターに一番最初に悪魔祓いをしようとした人物であり、率先してカトリックの神父と掛け合いアンジェラを救おうとしました。

大罪を犯してしまったアンですが、隣人を救うために悪魔の誘惑にも負けず、最後まで祈り続けた姿に感動しました。

アン役のアン・ダウドは、ヘデタリー継承で降霊術者ジョーンを演じていますが、本作でも信仰が揺らぎながらも聖句を読み上げる姿は気高いシスターのようでした。

ペンテコステ派の牧師スチュアート

スチュアートは、ヴィクターと一緒にボクシングをしていましたが、序盤では彼が牧師だったとは思いもしませんでした。

プロテスタント系の福音派の中のペンテコステという宗派を、今まで存じていなかったのですが、この宗派ではバプテスマ(洗礼)とそれに伴う異言を重視しているようです。

音楽との結びつきが強い宗派で、映画の中でも大騒ぎで歌いながら礼拝を行う様子が映し出されています。

彼らが異言を行う様子は、一種のトランスレーション状態に見えますので、他の宗派からみると異様な光景にみえます。

しかし、悪魔祓い中はスチュアートも皆と一緒に熱心に聖句を唱える姿が印象的でした。

ドクター・ビーハイブ「ルートワーク」を行う医者?

ルートワークとは、アフリカから伝わった祈祷術で、薬草や炎を使った独自の退魔法です。

ヴィクター達が訪れたハイチにも祈祷師がおり、ソリーンのお腹の中の赤ちゃんに祈祷を行っていました。

水を月明かりに照らす様子は神々しく、炎を使った荒々しい除霊は、今まで見る機会が少なかったので注意深く拝見させてもらいました。

バプテスマ派のドン・レヴァンズ牧師

キャサリンが通っていた教会の牧師は、プロテスタント教会で最も大きい宗派の一つであるバプテスト派に属しています。

大観衆の前で自信たっぷりに説教を行う様子は、アメリカ人独特のオーバーリアクションを多用し、なんだか信用のおけない人物にみえました。

しかし、見掛け倒しではなくキャサリンのために悪魔祓いに参加し、最後まで聖句を唱えキャサリンの母を抑え続けました。

最後に亡くなった人に対して、祈りを捧げていたのが印象的でした。

カトリック教会のマドック神父

『エクソシスト信じる者』に批判が集まる原因は、前作で大活躍したカトリック教会の神父が全く活躍しなかったことも原因の一つかもしれません。

マドック神父は、アンからの訴えを聞き入れ、ヴァチカンに直談判を行いますがあっさり断られてしまいます。

それだけではなく、マドック神父は悪魔祓いに参加することができず、車の中で震えながら聖句を唱えていました。

彼の姿には劇場でため息をつき、頭を抱えた観客も多かったことでしょう。

作中に登場した聖句について

『エクソシスト信じる者』での悪魔祓いは、ルートワークなどの黒魔術も使われますが、やはり聖書の言葉を多用し悪魔に抵抗する姿が印象的でした。

これは、キリスト教徒が日曜日の礼拝で聖句と説教を聞き、月曜日からまた誘惑の多い生活に戻り、心が悪に負けないように聖句や祈りを繰り返すのに似ているなと感じました。

悪魔祓いに使われた聖句

悪魔祓いで繰り返し使われていた聖句は、新約聖書マタイ6章9節から13節です。

天におられるお父様。 あなたのきよい御名があがめられますように。 あなたの御国が来ますように。 天の御国でと同じように、この地上でも、 あなたの御心が行われますように。 私たちに必要な日々の食物を、 今日もお与えください。 私たちの罪をお赦しください。 私たちも、私たちに罪を犯す者を赦しました。 私たちを誘惑に会わせないように守り、 悪から救い出してください。アーメン。

引用:bible.com マタイの福音書6:9-13

この聖句は祈りの時に必ず口にする言葉で、礼拝に出たことがある人には聞き慣れた台詞です。

特別な言葉を使うのでなく、日常的に神の言葉を口ずさむことで、進行を強め悪魔をしりぞける、それが悪魔祓いの根幹になるのかもしれません。

使徒行伝ってどんな内容?

ヴィクターは、作中で『使徒行伝を暗記した』と話していますが、果たして使徒行伝とはどのような言葉が記されているのでしょうか。

使徒行伝は、キリスト教に従事する神父、牧師、宣教師などが必ず読んで勉強し信仰心を強く持つように働きかける章です。

内容としては、十二使徒ペテロがエルサレムから異教徒の街ローマへ伝道するところや、異教徒だったパウロがキリスト教へ改宗するなどのエピソードが詰め込まれています。

そのため、ヴィクターが使徒行伝を暗記するほど読み込んだということは、妻ソリーンの死から立ち直るためにキリスト教の勉強を熱心にしていたことがわかります。

しかし、キリスト教の教えがどんなに素晴らしくても、ヴィクターの心を癒すことはできませんでした。

そして、ヴィクターの愛娘アンジェラが悪魔に憑かれてしまった時、ヴィクターは神を信じることができるのか…。

その結末は映画館で是非確かめてみることをおすすめします。

さいごに

『エクソシスト信じる者』について解説してきましたがいかがだったででしょうか。

映画が公開されたアメリカや欧州では、多くの人々がキリスト教に従事しているにも関わらず、あえて他宗教の信徒達を悪魔祓いに参加させたことは、各国で批判を呼んだことでしょう。

また、キリスト教の宗派についてあまり詳しくない日本人にとっては、誰が何をしていて何を信じているのかわからず混乱することもあるかもしれません。

本記事をまとめるにあたって、いろいろな宗派について学ぶことができて心から感謝しております。

最後まで読んでくれてありがとうございました。

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