2025年11月7日に上映された映画【トリツカレ男】は、正直あまり期待をしていなくて、子供と夫と鑑賞できる映画だったから見に行ったと言っても過言ではありませんでした。
絵柄が特徴的で、ごくありふれた恋愛物語なのかなとポスターを見て思っていましたが、鑑賞してみてそのストーリーの奥深さや台詞回しの鮮やかさに驚かされました。
監督は【クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん】を担当した高橋渉さん、キャラクターデザインはクレヨンしんちゃんシリーズや数多くのアニメに携わってきた荒川眞嗣さんが担当しています。
キャラクターデザインが個性的で、とっつきにくい印象がありましたが、実際に鑑賞してみると空を飛びながら歌うジュゼッペとペチカは、まるでシャガールのカップルのようでドラマティックで感動しました。
ストーリーもよくできていて、台詞回しは童話的で楽しく胸に残る言葉が多く、後半にかけて視聴者を泣かせる展開には強引さはありながらも見事だなと感じました。
鑑賞後すぐに、いしいしんじさんの同名原作小説を図書館で予約したほど素敵なストーリーでした。
今回、あまり期待していなかったけれど今年見たアニメ映画の中でも上位の高評価を獲得した【トリツカレ男】の魅力についてまとめてみました。
映画【トリツカレ男】のあらすじ
周りから「トリツカレ男」と呼ばれるジュゼッペは、サンドイッチ作り、カメラ、バルーンアートなど興味があるものにはとりつかれたようにやりこんではまってしまう男でした。
三段跳びでは世界記録を達成し、ネズミのシエロと暮らすうちにネズミ語まで習得してしまったジュゼッペは、その都度いろいろなものに夢中になり飽きていきました。
その日ジュゼッペは昆虫採集に夢中になっていて、青い蝶を追いかけていると、公園で風船を売っている女の子に目を奪われてしまいました。
彼女はペチカという名前で、以前外国語の習得にはまったジュゼッペは、ペチカの母国語も理解し、二人は深い友情で結ばれていきます。
しかし、ペチカの笑顔にどこか翳りがあると感じたジュゼッペは、シエロに頼んでペチカが何に悩んでいるか探索させに行きます。
すると、ペチカがヤクザ達に借金をしており高いみかじめ料を払わされていて、毎日りんごしか食べられないほど暮らしに困っていることを知りました。
ジュゼッペは、ペチカの借金元のツイスト親分となんとか接触し、親分の好きなものを献上しペチカの借金をチャラにしてあげました。
ペチカはそのことを知らず、くったくない表情でジュゼッペに「暮らしが楽になった」と笑いかけます。
ジュゼッペは、ペチカの笑顔に一点の曇りがないよう、シエロにペチカの家を詮索させて、彼女の悩みを一つ一つ知られないよう解決していきます。
しかし、ペチカの笑顔に翳りを見せている最大の原因がわかった時、ジュゼッペはとんでもないことを思いついたのです。
クレしん製作陣による徹底された絵作り
映画【トリツカレ男】のキャラクター達は、デフォルメされた癖のある造形をしていて、とっつきにくいという印象が鑑賞前にはありました。
しかし、実際に映画館で鑑賞してみると、キャラクター達の個性がそのまま動いているように錯覚するほど、物語と世界観が完成されていて素晴らしかったです。

前述しましたが、監督の高橋渉監督は数多くのクレヨンしんちゃんシリーズの映画に携わっており、デフォルメされたキャラクターの動かしに方については達人級だということがわかりました。
またキャラクターデザインを務める荒川眞嗣さんも、数々のクレしんアニメを手がけており、キャラクターの動きや個性を全て計算して、この形を作り上げたんだとわかりました。
二人が歌ったり踊ったりする動きも、一緒に風船を売る様子も、全てが楽しく温かい気持ちにさせられました。
センスを感じる絵作り
映画【トリツカレ男】では、他にもクレヨンしんちゃんを手がけてきたスタッフが関わっており、特にカーチェイスシーンの迫力はさすがだと感じました。
また、ペチカに借金を背負わせているツイスト親分も、隙があればツイストを踊っていて、クレしん映画に出てくる憎めない悪役を思い出させました。

ツイスト親分の子分たちも、一つ一つの動きがなんだか面白く、ちょっとした役なのに存在感があるなと思いました。
でも、ふざけた演出だけでなくシリアスな動きも完成度が高く、ペチカとジュゼッペが窓越しに手を合わせるシーンなどは、指先の動きだけでお互いの愛情を感じることができました。
歌も演技も完成度が高すぎる
映画【トリツカレ男】の予告を見た時、柿崎勇人さんが演じるシエロが「君はバカだ!世界一のバカだ!」と叫んでいるのが不思議と心に残りました。
実際に鑑賞してみると、普段声優をされていない俳優を起用しているのにも関わらず、皆いきいきとした声をしていて素敵でした。
特に、ジュゼッペ役の佐野晶哉さんとペチカ役の上白石萌歌さんの歌は素晴らしかったです。
前述したシエロ役の柿崎勇人は、可愛らしいながらもジュゼッペを心配している良い親友で、チューチューという台詞も人語の台詞も心がこもっていてよかったです。
また脇役のツイスト親分役の山本高広さんや、ペチカの母役の水樹奈々さんも、個性的な役をプロの手腕で見事に演じており安心感がありました。
そして、森川智之さんの優しく力強い声で涙を誘いました。
Aえ!groupの佐野晶哉さんの歌声と演技がすごい

ジュゼッペ役の佐野晶哉さんについては、【トリツカレ男】を鑑賞する前は全く知らなかったのですが、歌の上手さや演技の上手さに驚かされました。
佐野晶哉さんは、Aえ!groupに所属しており22歳で、兵庫県三宮出身で実際に喋っている様子をみると関西弁で陽気な印象を受けました。
インタビューでは、ジュゼッペに大変惚れ込んでいることがわかり、トリツカレ男について語る時は目をキラキラさせていたのが素敵でした。
また、幼少期にあの劇団四季のライオンキングでシンバ役を抜擢された佐野さんは、その後も声楽を学び抜群に歌が上手く、トリツカレ男でもその歌唱力を見せつけてくれました。
佐野晶哉さんと上白石萌歌さんの「ファンファーレ」を聞くだけでも、映画館に足を運ぶ価値はあるかと思います。
心に響くストーリー
映画【トリツカレ男】のストーリーについて、事前に最低限の情報しか知らなかったのですが、実際に見てみるとその物語の奥深さにどっぷりとはまり込んでしまいました。
良いことをする時は、なるべく人に知られないようにするべきという言葉がありますが、【トリツカレ男】を鑑賞してその意味を改めて考えさせられました。
ジュゼッペがペチカにしたことは、確かに良いことですが、他人が見たら狂気に似た感情を持つかもしれません。
実際に親友のシエロは、ジュゼッペのことをバカだと言っていて、その行為をやめてほしいと言い、ボロボロになっていくジュゼッペを見て心が傷ついていました。
詳しくはネタバレになるので伏せますが、タタン先生がしたことも、良いことではありましたがペチカの心を深く傷つけました。
誰かを大切に思うことは素晴らしいことだけど、それを見せつけたり広く知らしめてしまうと、誰かを傷つけてしまうのだと感じました。
この映画を視聴し終わった後に、「この世で一番ペチカを思っているのはトリツカレ男のジュゼッペ!この俺なんだ〜!」というセリフを聞くとそれだけでも泣きそうになります。
さいごに
映画【トリツカレ男】の魅力について語ってきましたがいかがだったでしょうか。
一見とっつきにくいキャラデザですが、キャラが動き出すととても魅力的で一気に引き込まれてしまうことは間違いありません。
歌もキャラクターもストーリーも、全てが楽しく美しいので、ぜひ子供と一緒に見てほしいえいがでもあります。
上映館や上映時間が限られているので、興味が湧いたらぜひお早めに映画館に足を運ぶことをお勧めいたします。
最後まで読んでくれてありがとうございました。


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