【チ。-地球の運動について-】なぜノヴァクとヨレンタは過激思想に走っちゃったの?

【チ。-地球の運動について-】なぜノヴァクとヨレンタは過激思想に走っちゃったの? アニメ化

2024年10月にアニメ化した【チ。-地球の運動について-】に登場する、ノヴァクとヨレンタは、キリスト教を深く信仰する熱心な親子でした。

しかしその反面、ノヴァクは異端審問の職業に従事し、異端と判断されてしまった人達に激しい尋問を加えて殺してきました。

ヨレンタも、父親からキリスト教の教えを受け継ぎ、その教えに従事するために自分自身の欲を押し込めていましたが、キリスト教から追われる立場になってしまうことでその優しい性格は一変しました。

ドゥラカと出会った時のヨレンタは、地動説を広めるためにカトリックに反旗を翻し、爆薬や武器を使用し多くの命を奪う立場の人間になってしまいました。

キリスト教の本来の教えは、互いに愛し合い許し合うことが基本原則となっています。

しかし、二人はその原則を破り、悪者に制裁を与える立場になってしまいました。

ノヴァクとヨレンタは、よく似た親子で考え方も似ており、それぞれ集団の中で孤立してしまったことで、過激思想が強くなってしまったのだと推測されます。

本記事では、二人がなぜ過激思想に染まり何人もの人間を虐殺するようになってしまったのか考察していきます。

最初は熱心な信者だった

ヨレンタとノヴァクの一番の共通点は、二人とも熱心なキリスト教信者であったことです。

特にノヴァクは、もともと傭兵であったそうですが、戦争で人の死を身近に感じてしまったことから罪の意識が大きかったのではないかと思います。

全ての罪を清め死後に救いが約束されているキリスト教は、ノヴァクにとって強く胸に響いたのではないかと思います。

ノヴァクが受けた感動は、純粋無垢なヨレンタにそのまま引き継がれており、ヨレンタも神様の存在を心から信じるようになっていました。

特にノヴァクがヨレンタに手袋を送る場面など、もしかしたら神様を信じていない人から見たらちょっと痛い二人に見えてしまうかもしれません。

神様に感謝するノヴァクとそれを見る幼いヨレンタ
引用:魚豊「チ。-地球の運動について-」小学館

熱心で一途だったからこそ孤立してしまった

しかし、二人の神に対する忠誠心は、作中でも周りの人間からすると理解されにくいところがありました。

特にノヴァクは、周りの修道士達がひいてしまうほど、拷問の能力に長けており、はっきり言って近寄りがたい印象を周りに与えていました。

現代でも必要以上に仕事を頑張りすぎて、周りとのコミュニケーションが疎かになってしまう人がいますよね。

ヨレンタもピャスト伯の施設で、一人孤立して図書館の雑用仕事などを黙々とこなしていました。

また、新卒の社員がもっと良い部署に異動したいと言うように、自分から研究の仕事をやらせてほしいと進言してしまいました。

このように二人とも社会に出れば孤立している立場でしたが、家に帰ればお互いに理解し合える娘と父親で、かけがえのない存在だったことでしょう。

しかし、働き始めたヨレンタは少しずつ自我が芽生えていき、ノヴァクとは異なる思想が湧き上がっていきました。

周りが見えなくなるほど執心してしまうこと

キリスト教の教えの中には、周りが見えなくなるほど強いこだわりを持ってはいけないと言われています。

そもそもキリスト教は、信徒達の心がバラバラにならないように、民衆に上手く集団行動をとらせるように作られた宗教です。

そのため、ノヴァクもヨレンタが悩んでいる時に『何もするな』『目立つな。栄光を目指すな。』とアドヴァイスしています。

しかし、ノヴァクは娘にこのように言っておきながら、職場では頑張りすぎてしまうところがありアントニ神父に目をつけられています。

ヨレンタも、神様の教えよりも自らの知的好奇心を優先するようになっていきます。

ヨレンタに、職場での振る舞い方を教えるノヴァク
引用:魚豊「チ。-地球の運動について-」小学館

家族と天国に行くために

沢山の人の命を奪ってきたノヴァクは、作中で何度も『家族皆で天国へ行く』という言葉を口にしています。

罪の意識と孤独感が大きかったノヴァクは、そのぶん家族に依存していたのではと考えられます。

しかしその言葉は、ヨレンタにも重荷になっていき、キリスト教の教え自体も、自分の都合のいいように捉えていきます。

そもそも倫理的に問題がある、拷問や人の命を奪う異端審問官をしていたら、天国などにいけるはずがありません。

神様の教えを破ったからには罰を与えるのは仕方ない、そのような都合のよい解釈をすることで、ノヴァクは間違った道へ進んでいきました。

ヨレンタと地動説

知的好奇心に抗えないヨレンタ
引用:魚豊「チ。-地球の運動について-」小学館

ヨレンタの表情は、漫画版だとよく分かるのですが、解き明かしたい謎が目の前にあったり、文字が読めることに関してオクジーに問いかけられた時だけは見違えるほど色っぽい表情になります。

まつ毛が強調され、目に輝きが増し、通常のオドオドとした自信のない表情が一気に変貌します。

ヨレンタはドゥラカに『私は地動説を愛している』と言いましたが、他者との関わりよりも研究や学問を突き詰めることに一生を費やしたのだと感じます。

女性は男性よりも、周りから自分がどう見られるかや世間体を重視するところがあると思いますが、ヨレンタは最後まで誰とも親密な関係を築かず人と違う道を走ることに一切迷いを持ちませんでした。

実際ノヴァクが研究の手助けをしてくれていたとしても、女性が研究の道を歩くことに眉をしかめていた人がいたかと思います。

それがピャスト伯の研究室で、あからさまになったのは仕方がないことでしょう。

孤立したヨレンタは、自分のことを愛してくれた家族のもとに最後まで帰ることはできませんでした。

コミュニティは過激思想を受け入れない

ヨレンタとノヴァクの危険性に、一番初めに気付いたのはアントニ神父でした。

アントニ神父は、結婚も子供を持つこともを許されていないはずの司教の息子で、本来はキリスト教徒には受け入れがたい立場の人でした。

しかし、司教の嫡子であることを逆手に取り、上手く出世コースを歩んできたアントニは、孤立した立場にいるヨレンタやノヴァクの存在は受け入れがたいものだったと思います。

アントニの策略によって、ノヴァクにヨレンタが死んだと思い込ませ、ノヴァクの暴走を止めることに成功しました。

ヨレンタは、なんとか尋問の魔の手から逃げることができましたが、20歳の時に人を殺して異端解放戦線の組織長になってしまいました。

異端解放戦線では、シュミットをはじめ優秀な人材の指揮をとっていましたが、誰一人彼女と親しそうな人はいませんでした。

それぞれが死ぬ覚悟で異端解放戦線に所属しているので、組織長であるヨレンタも、結局は自死することになっても誰一人彼女を止めることはできませんでした。

さいごに

ノヴァクとヨレンタが過激思想に走ってしまったことについて考察してきましたがいかがだったでしょうか。

二人の思想は偏っていましたが、金や世間体ではなく愛情と情熱に生きた二人の生涯は魅力的に感じてしまう人も多いことでしょう。

最後にヨレンタの腕が、爆風にのってノヴァクのもとに飛んできたのが、二人の愛情の深さを感じずにはいられません。

二人が家族以外の人にも、歩み寄り悩みを分かち合っていたら、悲劇は免れたかもしれませんが、純粋な心は穢れていったかもしれません。

最後まで読んでくれてありがとうございました。

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