2025年11月、大友克洋監督の【MEMORIES】が公開30周年を記念して、全国の映画館でリバイバル上映がされました。
全国と言っても、限られた映画館でしか上映されたなかったので残念に思っていたのですが、12月23日から配信されると聞いて喜びました。
アニメ放題、dアニメストア、FOD、DMMTV、Hulu、U-NEXTで公開されるそうですが、U-NEXTが前から気になっていたので、この機会に契約してみることにしました。ことが決定しました。
映画【MEMORIES】は、大友克洋さんが総監督をしており、3つの物語はどれも戦闘機や銃、戦艦や大砲などを描写したいという熱い思いが伝わってきました。
しかし、ストーリーはパプリカの監督でもある今敏さんが脚本をつとめた「彼女の思い」以外は、あってないようなものでした。
とにかくかっこいい戦闘シーンや、爆撃を行ったりそれを操作する機械をみたいという人にはおすすめの映画だと思います。
個人的には、戦艦や大砲などを撃つ様子には全く関心がないのですが、大友克洋さんがキャラクターデザインや総監督をつとめた「大砲の街」は独特の視点誘導に驚かされました。
彼女の想いで
【MEMORIES】の一番最初の物語「彼女の想いで」は、原作は大友克洋さんですが、「パプリカ」や「千年女優」などで有名な今は亡き今敏さんが脚本設定を担当しています。
ストーリーは、2092年の未来で宇宙のごみ収集を行っているコロナ号は、仕事が終わり本拠地に戻ろうとしている道中に救援信号を受け取ります。
コロナ号の船員であるハインツとミゲルは、巨大なバラの形をした浮遊船に潜入し、救難信号の配信先を特定しようとします。
しかし、そこには2000年代に活躍した天才ソプラノ歌手の幻想に囚われた場所でした。
監督は、アニマトリックスなどを手掛けた森本晃司さんで、音楽は攻殻機動隊の音楽などを監修した菅野ようこさんが担当しています。
声優も豪華で、磯部勉さんや山寺宏一さん、千葉繁さんなどが活躍しています。
最初は、キャラクターの会話がボソボソ聞こえて、コロナ号での会話は退屈に聞こえました。
昔のアニメは音響がしっかりしていなので、いつもどうにかならないかなと思います。
しかし、浮遊船を探索し始めてからが今敏さんの世界観が爆発してとんでもなく面白くなります。
また4Kリマスター化された映像は、暗い浮遊船内も明るく見やすくなっており、細部まで書き込みが施されていて感心しました。
ハインツとミゲルが、ソプラノ歌手エヴァの幻想に入り込む場面は、のちの今敏作品に多く使われる手法ですが、90年代ですでに完成されていたことがわかります。
特に、エミリがハインツの上に落下してすり抜けていく無常感は半端なかったです。
最臭兵器
監督は岡村天斎さんで、どこかで見た絵だなと思ったら、「YAWARA!」で演出絵コンテを描いていた人でした。
【MEMORIES】は1995年の映画なので、89年に放送された「YAWARA!」の絵柄はまだメジャーなものだったのだと思います。
2025年になると、この絵柄は古いなと思いますが、服の皺や背景、人の動きなどはとても丁寧に描かれています。
ストーリーに関しては、なんでこんな話を思いついてアニメにしようと思ったのだろうと感じるくらい印象だけで作った話でした。
風邪に苦しんでいた製薬会社に勤める田中信男は、所長室に置いてあった新薬を服用し、そのまま応接室で眠ってしまいました。
信男が起きると、会社内にいた人達は皆気絶しており、信男はたった一人で助けを求めます。
実は信男が飲んだ薬は、周りにいる人間を気絶させるほど激臭を発する恐ろしい兵器だったのです。
まず、製薬会社のくせに薬の取り扱いが杜撰すぎて、フィクションすぎて共感がしにくい話でした。
自分が臭くなったら、風邪で喉や鼻から変な匂いがするのと同じように、自分までその匂いで気絶してしまうと思うのですがなぜ信男は大丈夫なのでしょうか。
また、緊急アラートが鳴ってフィルターが何本も降りてきたのに、どうやって外に出てきたんだろうなと不思議に思ってしまいました。
さらには信男をとめるために軍が出てきたり、ミサイルが飛んだり、戦車が走り回ったりバタバタした演出が個人的には苦手な話でした。
唯一面白かった台詞は「氷漬けにして札幌の雪まつりに飾ってやれ!」という言葉だけで、他はそんなに面白くありませんでした。
大砲の街
大砲の街は、大友克洋監督が監督し脚本、キャラクター原案など全て監修を行っています。
また、「この世界の片隅に」を監督した片渕須直さんが技術設計を担当しており、とんでもない完成度のアニメに仕上がっています。
カメラはカットに入ることなく、ずっと長回しで場面が展開され、大輔に溢れた街の異常さと、何も考えず重労働を続ける労働者の淡々とした動きを追いかけます。
大砲を装填し撃つまでの一連の流れは、機械の動きは実に丁寧に描かれており、白煙をあげて打ち出される大砲は白煙まで手書きで克明に描かれており感動さえしてしまいました。
また、この大砲の街を見て2004年に公開された「スチームボーイ」を思い出しました。
同じようなカメラの動きと迫力ある映像、蒸気まで手書きで描かれた「スチームボーイ」は24億円もの制作費をかけたとテレビで宣伝されていました。
しかし、実際に「スチームボーイ」を鑑賞してみたところ、映像の凄さは分かりましたが、あまりにも話が面白くなくて反応に困ってしまいました。
「大砲の街」のように、戦争兵器の美しさと戦争に従事する人々の対比のみ描くだけなら、よくわからないけどなんかすごい映像作品だと鑑賞者は感じると思います。
しかし「スチームボーイ」のように、戦争に対する反発を全面に押し出し、さらに話が無駄に長いと鑑賞者も辟易としてしまいます。
大友克洋監督は、【MEMORIES】を作っている段階から、物語を書くのに向いていないとわかっていたら、「スチームボーイ」で大爆死することはなかったのではと思います。
ちなみに、「大砲の街」で父親役を演じるのはキートン山田さんで、息子は林勇さんが担当しており、のちに東京リベンジャーズで佐野万次郎などを演じます。
さいごに
映画【MEMORIES】は、とにかく銃を撃っているところや、かっこいい戦闘機がうごいているところをかっこよくみせたいアニメでした。
大友克洋監督の作品は、AKIRA以外はヒットしなかった理由がよくわかります。
今敏さんが脚本をつとめた「彼女の想いで」以外は、本当に話を考えるのが下手で、大友克洋さんの思想を全面的に押し出せば押し出すほど視聴者は冷めた目で見てしまいます。
しかし、絵の上手さと画面の動かし方は本当に天才的なので、アニメを作る際は絵や演出に集中してほしいなと感じます。
しかし、映画【MemORIES】は有料配信サイトと契約してでも見る価値はあると思うので、興味がありましたらぜひ鑑賞してみてくださいね。
最後まで読んでくれてありがとうございました。


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