話題高騰中の映画【サブスタンス】を見てきた感想!最高の自分が暴走する?!※一部ネタバレあり

話題高騰中の映画【サブスタンス】を見てきた感想!最高の自分が暴走する?! 2025年映画

2025年5月16日から上映された【サブスタンス】は、公開後SNSでの口コミが急上昇し話題になりました。

気になってナイトショーに行ってみたのですが、深夜の上映にも関わらず数人の観客が入っており、注目度はそれなりにあると感じました。

間違いなく言えるのは、今年見た映画の中で一番音響の質が良く、BGMの入り方や聞かせかたがとても優れた映画でした。

整形などで、美しい自分になるのではなく、自分の細胞から分身を作って、その体に入ることで輝いていた自分を取り戻すと言う考え方が斬新でした。

【サブスタンス】のあらすじ

エリザベスは、若い頃は映画で一役当てて名誉ある賞を獲得したが、50歳になった彼女にはエアロビクスの番組しか居場所が残されていなかった。

しかし、ディレクターはすでに若い女性の起用を考えており、彼女はすでに番組を降板されることに気付いてしまいました。

さらに追い討ちをかけるように、運転中自分のポスターが剥がされているのを見た彼女は、事故を起こしてしまいました。

幸い軽傷ですんだものの、敬信的ショックでしばらく立ち上がれずにいると、若い医師から触診され「良い背骨だ」と言われたことが妙に引っかかっていました。

そして病院の帰りに、お気に入りの黄色いコートのポケットに、「サブスタンス」という再生医療薬の情報が書いてあるメモが入っていたことに気がつきました。

エリザベスは一度は躊躇するも、とうとう「サブスタンス」に手を出し、自分の細胞からとびきり美しいスーを生み出しました。

スーとエリザベスは、7日ごとに体を交換しなくてはならず、次第にスーは交換時間を無視するようになっていきます。

交換時間が遅れれば遅れるほど、エリザベスの体は醜く老いてしまい、エリザベスは「サブスタンス」のカスタマーセンターに「スーが約束を守ってくれない」と苦情を言いました。

しかし「サブスタンス」の係員は「彼女などいない。それはあなた自身だ」とエリザベスに冷たく言い放ちました。

どんどん醜くなっていくエリザベスは一体どうなってしまうのでしょうか。

作り込まれた世界観

映画【サブスタンス】は、監督のコラリー・ファルジャの中ではっきりとした世界観が作り込まれており、142分と少し長い映画でしたが最後までその独特な世界観にどっぷり浸かることができました。

例えば不思議の国に行っているわけでもないし、ファンタジーではないのですが、キューブリック映画のような非日常感が詰め込んだ世界が広がっていました。

ホラー映画は、音が重要だと言われていますが、静寂と効果音の入りかたが完璧でした。

本映画は、2024年アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞していますが、エリザベスが醜くなっていく特殊メイクはとてもリアルでした。

ありそうだけど非日常的な場所

まずエリザベスが登場してから引き込まれるシーンは、真っ赤な廊下と幾何学的な模様をした絨毯と、長い廊下を撮影が終わって歩いていくシーンでした。

これはキューブリックの「シャイニング」で、子供が自転車で廊下を走るシーンに似ており、胸が苦しくなるような閉塞感がありました。

廊下だけでなく、特にエリザベスの住んでいる部屋は窓が大きく、外を一望することができるのですが、そこには今特に注目されている女優の看板が張り出されています。

サブスタンスを使ってからは、常にスーの看板が窓の外から笑いかけているようで、視聴者もこの居心地の悪さを一緒に感じることになります。

エリザベスとスーの音楽が交錯していく

サブスタンスの挿入曲を作成したラファティーさんは、エリザベスの曲をオーケストラを使った情緒的な音楽にし、スーの曲を人工的で無機質な音楽にしたそうです。

特に、力強いキックとベース音を使ったスーの曲は、サブスタンスの世界観を最も表す曲で番宣にも多用されています。

コラリー監督は、あらかじめどの場面でどのような曲が入るかはっきりとしたヴィジョンを持っていたそうですが、スネア音がカメラワークと連動してスーの姿を捉える場面は背筋がゾクっとしました。

【サブスタンス】でのトイレという場所

映画【サブスタンス】では、トイレが必要以上に明るく清潔で、エリザベスとスーの交換が行われるのもほぼ全てトイレでした。

映画の中でたびたびトイレという場所はよく使われますが、【サブスタンス】ほど象徴的にトイレが使われている映画は、なかなかないかと思います。

また、エリザベスが自分が番組の降板の対象になっていることを知ったのもトイレでした。

なぜこのように物語が動く場所にトイレが使われたのかというと、恐らくエリザベスやスーのように、外に発信していく仕事は、排泄と同じような役割を担っていたのではと考えられます。

排泄は美徳で摂取は悪

清潔すぎるトイレとは反対に、本来楽しく魅力的であるはずの食事や料理シーンに関しては、【サブスタンス】では非常に汚らしく描かれていることが多いです。

例えば、番組ディレクターのハーヴェイがエビを貪り食う場面は、食べかすは無惨に放置され非常に不快な思いになります。

散々エリザベスと一緒に仕事をしてきて、視聴率を稼ぎ良い思いをしてきたのに、人気が落ちてきたら食べ終わったエビの殻のようにやすやすと捨てられてしまいました。

飲まれるはずだったお酒には、ハエが浮いておりとても食事をする気分になれません。

また、エアロビクス番組を降板したエリザベスは、暴食に走るようになりハーヴェイと同じように食べカスを大量に放置するようになりました。

極め付けは、料理を作る場面などはとてもではないけど見ていられたものではありませんでした。

自らと対峙するシャワーシーン

エリザベスの家のシャワールームは、人が一人入るのがやっとの非常に狭い部屋で、スーとエリザベスはこのシャワー室で自らの裸をいつも見つめ直します。

印象的なシーンとしては、スーが産まれてきて一通りの事後処理が終わった後、シャワーを体に浴びて希望と満足感に溢れた顔をしていました。

対照的にエリザベスがシャワーを浴びる時は、いつも絶望の縁に立たされていて、カメラはエリザベスから急激に離れていき狭い部屋で苦しそうにシャワーに打たれていました。

デミ・ムーア演じるエリザベスが最高!

映画【サブスタンス】では、エリザベスを演じるデミ・ムーアが非常に優れた女優であることを証明してくれました。

本作は、実はセリフがないシーンが多く、表情や仕草などが登場人物の心情を表すのが難しかったと思いますが、デミ・ムーアはエリザベスの焦りや怒りをぶつけるように演じてくれました。

彼女自身も、ハリウッドという過酷な世界で生き抜いてきた女優で、エリザベスの気持ちが痛いほどわかったのではとも感じます。

また、特殊メイクでの撮影は準備に長時間かかりさらに気温が高く過酷だったそうですが、デミは最後まで不平不満は言わず役に入り込むよう努力していたそうです。

阿鼻叫喚のエンディング

本作のエンディングについては、賛否がわかれるところで、人によっては「ラスト20分はなくてもよかったのではないか」と発言する人もいました。

しかし、あのラストシーンがあるからこそ、場面の合間に椰子の木を下から見上げるシーンが何度も使われたのかわかりますし、肉体的な完全を目指すことがいかに無意味か理解できると思います。

詳しいことは伏せますが、ラストシーンは近年稀に見るほどのグロさがありますので、視聴する際は覚悟を決めて劇場に足を運んでくれればと思います。

さいごに

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