2024年10月18日、近くの映画館で上映されている【破墓/パミョ】は、SNSでも評判が良く上映期間が限られているので折角だから観に行こうと映画館に足を運びました。
韓国では2024年『インサイド・ヘッド2』などを抑え、1200万人の動員数を確保し大ヒットを記録したそうなので、映画としての評価が高いことは確実だといえるでしょう。
実際に鑑賞してみると、巫堂(ムーダン)の儀式は踊りや音楽が素敵で興味深く、風水師サンドク役のチェ・ミンシクの演技は渋く存在感があり良かったです。
しかし、物語の後半になるに連れて実はある家族に怒っている霊障の原因は、日本の鬼の怨霊のせいであると分かり、ここまで日本が嫌われているのは観ていて辛くなりました。
本記事では、映画【破墓/パミョ】の良かった点と悪かった点についてまとめてみました。
【破墓/パミョ】のあらすじ
巫堂であるファリムは、有能な霊能者で巫女であり、弟子のボンギルと共に資産家の家族の依頼を受けることになります。
彼らは社会的に成功した夫婦でしたが、原因不明の流産を繰り返し、やっと産まれてきた息子も医療的なケアが必要で入院をしていました。
資産家の当主は、息子の命を救ってほしいと並外れた報酬額をファリムに提示し、ファリムは全ての災厄は資産家の先祖の墓にあると霊視し、風水師のサンドクに協力を頼みます。
墓の改装とお祓いを同時にやらなくていけないことを知り、サンドクは躊躇しますが、二つ返事でこの「破墓/パニョ」の儀式に同行することにします。
さらに葬儀師のヨングンと共に「破墓/パニョ」の儀式に参加しますが、儀式後に不穏な空気が立ち込め、急に天候が豪雨になります。
さらに資産家家族が、奇怪な死を遂げ、サンドクはさらに墓跡を捜索してみるとさらにもう一つの棺が見つかります。
お墓の中には、資産家の先祖のお墓だけでなく、日本の鬼が埋葬されており、災厄を招いていることがわかったのです。
破墓/パミョの儀式が興味深い
墓の呪いを払う朝鮮半島の儀式「破墓/パミョ」は、日本のお祓いとは全く違うもので、軽快な音楽と共に踊り狂う独特なものでした。
両手に刃物を持ちながら、踊りながら自分の体と豚の死体を傷つけ、炭を顔に付けて叫び声を出すファリムは不思議な美しさがありました。
儀式に使われた小道具などは、CGなどは使わず全て手作りで質感に拘っており、役者の演技もあって儀式がより本物にみえるように生々しく作られています。
粒揃いな役者達
映画【破墓/パミョ】は韓国で大ヒットを記録していた大きな要因としては、役者の質がとてもよかったことが一番の理由ではないかと思います。
儀式で踊り狂う、ファリム役のキム・ジョウンは、韓国でも人気の女優で、整った顔立ちと美しい肌だけでなく一挙主一同が凛としていて美しかったです。
またファリムの弟子である、ボンギル役のイ・ドヒョンも、かなりの美青年でした。
作中では悪霊に憑依される場面もあるのですが、その時の演技も素晴らしく、流暢な日本語を披露してくれたので驚かされました。
全体的に皆の演技を引っ張っていた、サンドク役のチェ・ミンシクは『シュリ』や『オールドボーイ』で認められた実力派俳優で、存在感と渋さには驚かされました。
ヨングン役のユ・へジンも、韓国映画に多数出演しているそうで、演技が上手い役者だなと感じました。
まさか、ここまで良い役者を達を使って、思いっきり日本を攻め立てる映画が作られるとは思ってもいませんでした。
日本への対抗心がむき出し
仕事を依頼していた資産家は、アメリカなどにも拠点を持ち、社会的に成功した人物でした。
しかし、その一族の血族が絶えそうになった原因は、先祖の墓に一緒に埋葬された鬼の怨霊のせいだったのです。
なぜ日本人達が、わざわざ朝鮮半島に呪物を持ち込んだのかわからないですし、怨霊が一族を呪っていた理由は作中で語られることはありませんでした。
そして怨霊は関ヶ原の戦いで死んだようですが、なぜか「北へ前進だ!」という戦時中の言葉を口にする場面もあり、キャラクターが若干ぶれているように感じました。
怨霊に鮎を持ってこいと言われ、ファリムが鮎を使って神木の近くに怨霊を誘い出すシーンがあるのですが「たらふく召し上がられましたか?」というセリフに、日本への恨みや辛みが凝縮されているように感じました。
ストーリーが浅い
日本のホラー映画で、いわゆる悪霊が登場する時は、何か確固とした理由があり人を襲っていることが多いです。
例えば、酷い死に方をしたから自分の無念を他人に見せつけたいとか、酷い虐待を受けていたとか、実は母親を探していたなど、悪霊の中にもストーリーがあるのです。
しかし【破墓/パミョ】では、鬼の怨霊は恐怖の対象でしかなく、なぜ一族を呪うのかなぜ朝鮮半島の人々に恨みを持つのかなどの理由は一切語られませんでした。
これは、ただ日本という国が怖くて仕方がなくで、悪者にしたいという気持ちだけで本作のストーリーを構成し、気持ちを汲むことなどは全く考えられなかったんだと感じました。
悪役の目的がはっきりせず、ただの記号として扱い、「悪霊を倒すために一致団結するんだ!悪いのは全部こいつだ!」という思想は子供じみているなと感じます。
他国を悪者扱いするのはいいのですが、こういうストーリー構成で大ヒットを記録してしまうのは、非常に残念だと感じました。
良い役者と拘った舞台設定、衣装を使って、悪役だけに責任を押し付ける浅いストーリーに愕然としてしまいました。
さいごに
韓国映画【破墓/パミョ】を鑑賞した感想をまとめてみましたがいかがだったでしょうか。
このような映画を全国公開されるのは、非常に不愉快で、本当に喧嘩を売られているとしか思いません。
良い役者を揃えているのに、このようなストーリー構成の映画ばかり作っていたら、韓国映画の成長は見込めないのではと思います。
「破墓/パミョ」の儀式を観たいなら一度目を通してもいいと思いますが、人によっては不愉快に感じる映画なので無理してみる必要はないかと思います。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
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