2007年にTVシリーズが公開され、和紙に描かれたような背景と謎の人物薬売りのビジュアルの良さ、そして胸に響くモノノ怪との人間ドラマに多くのファンは魅了されました。
そして、クラウドファンディングで金額を集め、紆余曲折を繰り返しながらも2024年7月26日に劇場版【モノノ怪 唐傘】が全国公開されました。
本作では、テレビ放送での作画よりもさらにより鮮やかな色彩と、神谷康史さんが演じる薬売りがハマり役で新鮮でした。
【モノノ怪 唐傘】の舞台は、女性の執念が渦巻く大奥で、どんなドロドロの群像劇がみられるか楽しみにしていましたが、意外とあっけない終わり方で驚きました。
妖怪「唐傘」が、なぜ大奥にいて、なぜ暴れていたのかは、なんとなく亡くなってしまった北川のせいなのではなどと予想はつくのですが、映画の中ではハッキリした答えはでませんでした。
本記事では、劇場版【モノノ怪唐傘】を鑑賞して良かった点と、モヤモヤした点をまとめてみました。
劇場版【モノノ怪】は、どうやら三部作のようなので、シリーズを全て鑑賞したら全てすっきり解決するのかなと感じました。
劇場版【モノノ怪 唐傘】のあらすじ
公式サイト→https://www.mononoke-movie.com/
天子の世継ぎを産むために作られた「大奥」は、各地から優れた家柄の女から小間使いまで、多くの女性が集まる男性禁制の場所で、時には政治の世界を動かすほどの影響力を持った機関でした。
立身出世を求めて田舎からやってきた「アサ」と「カメ」は、緊張しながらも外の世界からは遮断された大奥に同じ日に入所することになりました。
書を嗜み物覚えがよく仕事が早いアサと、愛想がよく人懐っこいが仕事には不真面目なカメは、正反対の性格でしたが二人ともすぐに打ち解けることができました。
そして、初日の挨拶を終えた二人は、大奥の慣例だという『御水さま』と呼ばれる井戸に自分の大切なものを捧げ、同時にその井戸から汲まれた臭い水を飲み干すという儀式を受けました。
一方、モノノ怪を斬ることを生業としている謎の青年「薬売り」も、大奥で何か不吉なことが起こっていることを知り、七つ口で坂下に文句を言われながら待機をしていました。
女の情念が渦巻く大奥で、雨が降り続き、そして次第にモノノ怪「唐傘」が動き出します。
衣装が素敵
劇場版モノノ怪では、アニメでは暗い印象をもった薬売りさんが、明るい衣装と髪にメッシュも入れて大体的なイメージチェンジを図りました。
アニメ版の薬売りさんは鼠色の羽織に、黄色い円と緑や紫の縁取り、帯は赤茶と黄色の唐草模様で、帯紐は赤色が使われています。
全体的に抑えた色味と、落ち着いた雰囲気、そして暗い過去を背負っていそうな人物です。
一方劇場版の薬売りさんは、黒い羽織に赤い渦模様が目立っており、白と黒の組紐が巻かれていてメリハリがついた衣装になっています。
帯は濃い紫色で、襟部分が鼠色っぽいのは、アニメ版の薬売りさんの面影も少し残しています。
髪にも赤色のメッシュが施されており、全体的に若々しくなった薬売りさんに、惚れ直した視聴者も多いのではないでしょうか。
大奥の衣装もアレンジが美しい
本作の舞台になる大奥では、多くの女性がそれぞれ美しい着物を羽織り生活しているのですが、その一つ一つのアレンジが個性が出ていて良いなと感じました。
着物の様式美を崩さず、それでいて奇抜でどの映画にも使われていないようなデザインは、さすが「モノノ怪」シリーズだなと感じました。
例えば新人女中で、本作のメインキャラクターで仕事ができるアサは、昔高貴な貴族しか着ることを許されなかった紫色の着物を着ています。
ただ、新人であり経験が浅いことから、薄い紫色のグラデーションが施されていて、帯も紫というよりもピンク色に近いです。
アサの有能さと、まだ少し自信が足りない誰かに頼りたいという気持ちがこもった衣装だなと感じました。
声優を務めるのは、黒沢ともよさんで、凛とした強い意志とカメに頼りたい気弱な部分を上手く演じてくれています。
一方、アサと同期であるけれども注意力が足りていないカメは、着物の色に統一感はありません。
青や水色のグラデーションに、ピンク色の模様も入っていて、さらに黄緑色の帯を締めているので、綺麗なのですがどこか子供っぽい印象を与える着物です。
しかし、アサと比べてみると髪の結い方はしっかりとしており、女性の美しさである髪はしっかりと結いあげ、いち早く天子の目に触れようとしている野心も感じます。
声優を務めるのは、悠木碧さんで、くったくない甘えっ子な声がカメのキャラクターにぴったりでした。
歌山は、大奥を統べる御年寄で、濃紺と紫色の羽織に赤と白の着物が印象的です。
大きく垂れる襟は、正に夜の蝶のなにふさわしい豪華さだと感じました。
彼女がアサに目をかけたのも、自分と同じように紫色の着物を着ていて、ポテンシャルが近いことを暗示していたように見えます。
歌山は、小山芙美さんが演じており、落ち着いた口調で淡々と話すことで大奥の雰囲気をしっかりとつくりあげてくれました。
薬売りさんがよく動く
アニメでは、じっと立ち止まってなにやらボソボソと喋っていた薬売りさんですが、映画に出演するのが嬉しいのか走ったり飛んだり大スクリーンを存分に使って動いているのが良いなと感じました。
また、退魔の剣を抜く時の決めポーズなどもあり、この機会のために薬売りさんがカッコよく見える動きが研究し尽くされてきたのではと感じました。
アニメでは、ただ「解き放つ!」と言って剣を抜くだけだったのですが、劇場版薬売りさんは剣を抜く前に忍者のように印を結んでから剣を抜きます。
新しい薬売りさんを演じる神谷さんは、監督から「実は薬売りは64人もいて、劇場版の薬売りはその中でも特別な8本の退魔の剣を持っている人物」だと聞かされたそうです。
そのため、アニメ版よりも沢山走れるし、くるくる回るし能動的に動く場面が多々ありました。
神谷浩史さんの薬売りさんが思ったよりもいい!
神谷浩史さんは、声優界の中でも「できる人」と言われることが多いですが、櫻井孝宏さんの薬売りさんよりもハキハキしていてかっこいいなと感じました。
櫻井さんのファンには申し訳ないのですが、薬売りさんが悦に浸っているようなナルシストさが抜け、キリッとした気の強さがあるのが良かったです。
映画ならではの迫力
【劇場版モノノ怪唐傘】では、最後の唐傘と薬売りとの戦いは、大音響と迫力ある画面で見れて良かったと感じます。
アニメでスマホの画面で見てきた戦いが、こんなにも圧倒的な美しさになるんだと感心しました。
神儀さんが縦横無尽に飛んで、唐傘と何度も衝突する場面は、一見の価値ありだと感じます。
水の表現
本作の舞台は大奥ということなので、男女の情事や生々しいシーンも覚悟していたのですが、天子の寵愛を受けたフキが夜伽をする場面は予想に反したものでした。
それは、二人が泉に入ってお互い水を飲み合うという行為で、今までにないラブシーンを目の当たりにし驚きました。
一心不乱にお互いに水を飲ませ合い、口からこぼれてしまうほどに貪るように水を飲む姿に、二人がただなならぬ関係になっていくのがわかりました。
同時に、やはり大奥で供給される水には、不思議な力があり、人を狂わせる力があることがよくわかりました。
原作ファンからするとストーリーはイマイチ…
独特な表現と、美しい世界観を作り上げた【劇場版モノノ怪 唐傘】ですが、ストーリーについては全くオチがつかず、原作アニメを知っていた身としては驚き慌ててしまいました。
アニメ版モノノ怪では、どのシリーズも何故モノノ怪が作られてしまったのかについて、大筋を明示してくれるのですが、劇場版ではモノノ怪が何故生まれてしまったのか語られなかったからです。
作中では、大奥で命を落とした北川という人物が登場しますが、彼女が唐傘のような気がしますが、被害者でもあるような懸念もあります。
また唐傘を生み出してしまった原因は、歌山が大奥に厳しい規律を定めてしまったようにみえますが、それだけでもないような思います。
また、モノノ怪を斬るためには、「形」「真」「理(ことわり)」が必要ですが、その三つを揃えずに退魔の剣を使ったのは初めてのことでした。
なんでこのようなストーリーにしたのかは、唐傘を鑑賞するだけでは全く検討がつきません。
劇場版モノノ怪は三部作であることが、公開当初に判明しましたが、全ての話がオムニバス形式になっている可能性もあるのではないのかと思います。
次回作の【火鼠】が公開されるまで、もやもやとした気持ちを引きずっていかなくてはいけないかもしれません。
さいごに
【劇場版モノノ怪 唐傘】は、圧倒的なビジュアルの良さに感動しましたが、オチをまるごと視聴者に投げてくるので驚き慌ててしまいました。
次回作である【火鼠】を試聴するまで、誰が唐傘で目的はなんだったかについて、ゆっくり考察していきたいと感じました。
アニメ版とは雰囲気もストーリー構成も異なりますが、劇場版の良さにハマる人もいると思います。
時間があればぜひ劇場に足を運んでみてくださいね。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
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