見なきゃ損!アマプラで見れる溝口健二監督作品【雨月物語】【西鶴一代女】【近松物語】

見なきゃ損!アマプラで見れる溝口健二監督作品【雨月物語】【西鶴一代女】【近松物語】 アマプラ映画

昔から大河ドラマを見るのが耐えられない性分だったのですが、溝口健二さんの映画を見ることで、邦画を見る目が大きく変わったと感じます。

白黒映画などは今まであまり見たことがなかったのですが、そういえば大学で雨月物語の授業をやったことがあって、京マチ子がでてくるシーンだけを見たことがありました。

大人になってアマプラで雨月物語が見放題になっていることを知り、試しに視聴してみたのですが、見事に溝口健二さんの世界にどっぷりはまってしまいました。

雨月物語の監督である溝口健二さんは、名監督である黒澤明さんと同様にヴェネツィア国際映画祭で受賞歴があり、フランスなどでは高く評価されている監督だということを知りました。

生身の人間の演技にこだわった溝口健二監督の映画は、見るものの心に強く残る作品になっています。

本記事では、溝口健二監督の代表作である【雨月物語】【西鶴一代女】【近松物語】のあらすじや、見どころについてまとめてみました。

【雨月物語】

【雨月物語】は、江戸時代に上田秋正によって書かれた短編集とモーパッサンの『勲章』を合わせ、川口松太郎さんと依田義賢さんによって脚本が作成されました。

溝口監督は、役者の演技を引き出すために積極的なアドバイスは行わず、カメラを回しっぱなしにする技法を使い演者をぎりぎりまで追い詰める大変厳しい監督でした。

しかし、役者の演技は誰一人として手を抜いている人はおらず、昭和に撮影された映画なのにも関わらず戦国の厳しい時代に生きた眼差しがスクリーンの中に感じ取れました。

さらに当時日本映画界で特に評価が高かった京マチコさんや、彼女と羅生門で共演した名俳優の森雅之さん、溝口映画に数多く抜擢されてきた女の激情を色濃く演じる田中絹代さんがメインキャストにあがります。

セットは大規模かつ精巧でエキストラも大量に出演しており、森雅之演じる源十郎が市場で京マチコが演じる若狭に出会うシーンは、現在の映画ではなかなか撮影するのが難しいのではと感じました。

また、白黒映画であっても着物の光沢は美しく、京マチコの妖艶な動きに花を添えていました。

【雨月物語】のあらすじ

近江の国で貧しい暮らしをしている源十郎は、妻の宮木や子の源一により良い暮らしをさせたいと、栄えている長浜に焼き物を売りに行くことを決意しました。

すると、義弟の藤兵衛も戦乱の世に乗じて武士になりたいと、源十郎の妹で妻である阿浜を連れて源十郎についていきました。

宮木は、家族三人で暮らせれば何もいらないと言いながら源一を連れて村に戻ろうとしますが、至る所に野良兵が群がっており危険が迫っていました。

一方長浜の市場は繁盛しており、源十郎の焼き物は飛ぶように売れますが、そこで若狭という美しい姫君と出逢います。

源十郎は若狭に魅せられて、豪華絢爛で天国のような暮らしを手に入れ、次第に妻や子のことを忘れ遊び呆けるようになっていきます。

【雨月物語】の見どころ

1953年に国際ベネツィア映画祭で銀獅子賞を獲得した雨月映画は、その年最高賞である金獅子賞が空席だったため、実質その年で一番評価が高かった作品だともいえます。

CGや特殊技術が発達していない時代の作品ですが、カメラワークは抜群でどうやって撮影したのかわからないほど優れており、これらの場面は溝口監督と長く仕事をしてきた宮川一夫が務めています。

また、後世の作品にも多大な影響を与えている作品であり、2024年にアカデミー賞を受賞した山崎貴監督の【Always 三丁目の夕日】で【雨月物語】のワンシーンと全く同じ場面がでてきます。

幽霊の描写も、終盤になると息が凍えそうなほど白くうつるのは、幽霊がいると部屋が寒くなるというホラー映画でよくある演出がいち早く使われていたと思います。

【西鶴一代女】

溝口監督は、姉が芸妓になり家族を養っていたという過去からなのか、女性の美しさや打たれ強さや描くのに長けた人物であることは間違いありません。

【西鶴一代女】で主役を演じる田中絹代さんは、飛び抜けるような美人ではないかもしれませんが、女性の内側から湧き出る執念や愛や苦しみを表現するのが非常に上手い役者でした。

彼女が演じるお春は、若い頃から年老いるまでの女の全ての感情を、その時々によって見事に演じ、映画が終わった時にはお春という女性がたまらなく愛しい存在に思えました。

【雨月物語】と同様に、国際ベネツィア映画祭に出展した【西鶴一代女】は1952年に国際賞を受賞しています。

また、お春が恋に落ちる勝之助は若き日の三船敏郎で、ため息が出るほどの色男でした。

【西鶴一代女】のあらすじ

街の片隅で夜鷹として客をとるお春は、その昔城の主人の嫁になったり、遊郭で大夫にまで上り詰めるなど美しい女だった。

しかし今は年老いた顔を厚化粧で隠し、百姓達に笑われてしまうほど落ちぶれてしまいました。

客が取れず途方に暮れていると、どこからかお経が聞こえてきて、お春はふらふらと羅漢堂の中にはいっていきました。

そこにはたくさんの仏像が並んでおり、そのうちの一つに昔恋に落ちた勝之助の顔が浮かんできました。

【西鶴一代女】見どころ

【西鶴一代女】見どころは、最後お春が自分の息子が殿様方になったことがわかり城に赴く場面です。

遊女として身を落としてしまったお春は、高貴な身分である息子と一緒に暮らすことを許されず、離れた場所から成長した彼を見つめることしか許されませんでした。

溝口監督が多用する、ロングショットがここでも使われており、息子の後を必死に追うお春をいつまでもしつこくカメラが追い回します。

田中絹代の身を引き裂かれんばかりの演技と、左右に大きく揺れながらお春を追いかけまわすカメラワークは、子供への愛で揺れ動くお春の心をそのまま表しているようでした。

【近松物語】

【近松物語】は、1954年に製作された映画で、人形浄瑠璃【大経昔暦】をもとに作られた映画です。

溝口映画の代表作の一つで、大経師の妻おさんが金策の工面に失敗し、手代の茂兵衛との不義密通の疑いをかけられ追い込まれていくというお話です。

安定した地位を確立していたはずの二人が、ちょっとしたきっかけで道を外れていく展開は胸が締め付けられました。

香川京子が演じるおさんが、山を駆け下りながら茂兵衛の名前を呼ぶ姿は、大自然の中でのロングショットで恋する苦しさがひしひしと伝わってきました。

【近松物語】のあらすじ

京都烏丸の大経師以春は、宮中の経巻表装で安定した商いをしており、町人でありながら役人と同等の地位を得ており、傲慢な態度が目立っていた。

以春の妻おさんは、家族から金の無心を受けていましたが主人に申し出ることができず、手代の茂兵衛にお金を融通してもらえるように相談します。

茂兵衛は店の印判を使ってお金を借りようとしますが以春にばれてしまいます。

咄嗟に女中のお玉が、それは私が茂兵衛に頼んだことだと弁明しますが、以前からお玉と関係を迫っていた以春は、茂兵衛に嫉妬し屋根裏部屋に幽閉してしまいました。

その夜おさんは、お玉に茂兵衛を庇ってくれたことに礼を言うために彼女の部屋にやってきたのですが、以春が夜な夜なお玉の部屋を訪れていることを知り、その夜おさんはお玉の部屋に居座ることにしました。

しかしそこにやってきたのは茂兵衛で、しかも二人が一緒の部屋にいたことを番頭格の助右衛門に見られてしまい、不義密通の罪で二人は追われる身となってしまいます。

逃げ場がなくなった二人は、琵琶湖に船を出し心中しようとしますが、茂兵衛が以前からおさんを愛していたことを打ち明けたことで死ぬに死ねなくなってしまいました。

逃避行を続ける二人でしたが、役人に追い回され、両親からも見放されいよいよ逃げ場がなくなっていきます。

【近松物語】の見どころ

江戸時代の大経師の裕福な家は、現在では見ることがなかなかできないですが、【近松物語】ではこの大豪邸を舞台に登場人物達が本当にそこに住んでいるように行き交っているのが興味深かったです。

手代の茂兵衛が眠っている部屋は、半物置ののような場所で、以春の部屋やおさんの部屋とは違い身分の違いを感じました。

全体的に奥行きを感じられる場面が多く、茂兵衛が一仕事終えて寝ようとしている時、奥からおさんが茂兵衛を呼ぶ声が聞こえるとなんとも不思議な気分になります。

後半の見どころは、お互い好き合っていることを知った茂兵衛とおさんが、必死に離れようとしながらも離れられないもどかしさが辛いです。

冒頭では、不義密通で磔になる罪人達を見ておさんは「あんな浅ましい目にあうならいっそご主人に打たれてしまったほうがいい」と言っていました。

茂兵衛も「人の道を踏み外してはいかん」と話していて、二人とも否定的な立場をとっていたのに、お互いの愛がわかってしまってから別人のように変わってしまったのが面白いなと感じました。

さいごに

溝口健二監督は、演者にNGを出す時はどこが悪いとかこうして欲しいということは言わず、良い演技ができるまで何度もやり直すらしいです。

役者達はどこを直していいかわからず、しかもカメラがなかなか止まらないので次第に追い込まれていき、ボロボロになりながら良い演技を絞り出すそうです。

本当に鬼のような指導ですが、実際になにかをやっている最中は、誰も悪いことなど指摘してくれず、指摘されたとしてそうしたとしても、全く意味がないことだったと後から気付くことがあります。

自分の中にある問題点は、たくさん考えて気付いて改善しないと意味がないと改めて感じました。

溝口監督の映画は、本当に素晴らしいものばかりなので、ぜひAmazonプライムで視聴することをお薦めいたします。

最後まで読んでくれてありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました