【チ。-地球の運動について-】は、15世紀ポーランドが舞台の地動説に携わった、ラファウやバデーニのような欧州の人物が主人公でしたが、三人目の主人公ドゥラカは移動民族の少女になります。
浅黒い肌と黒髪、茶色い目をしているドゥラカは、その特徴的な風貌や暮らしぶりからヨーロッパに広く分布しているロマ民族ではないかと推測されます。
インドからやってきたロマ民族は、歌劇『カルメン』『ノートルダムの鐘』などの踊り子としての姿が有名ですが、長く欧州に滞在してきた彼らにはキリスト教の教えが深く根付いていたようです。
本記事では、ドゥラカが所属していたロマ民族の背景や、その名前の由来などについて調査して調べてみました。
移動民族のロマとは
移動民族のロマ達は、主にインドからやってきた民族らしいですが、見た目がエジプト人に似ていることから古くはエジプト人という言葉がなまってジプシーと呼ばれていたこともありました。
天幕を張り馬車に乗って移動し、一定の場所に定住しないことが特徴としてあげられています。
【チ。-地球の運動について-】の舞台と同じく、15世紀にヨーロッパに渡ってきたロマ達は、独自の言語ロマニ語だけでなく多言語を話すこともできていたそうです。
キリスト教には比較的に早く改宗したロマ民族は、英語の「oh!my God!」のような感嘆句も存在し、聖地巡礼なども行なっていたそうです。
ロマ達は、家族や親戚の集団を作り、その人数は数十人から多い時には100人にも達し、時にはばらけたりつかず離れず旅を続けてきました。
仕事は主に、馬の飼育や売買、音楽や踊りなどを披露したり、占いや薬草の採取、農業の手伝いなどをしていたそうです。
子供達は基本的には学校には通わず、両親からの教育を受け、生きていく術を徹底的に叩き込んでいくスタイルのようです。
ドゥラカの場合は、両親が亡くなってしまっているので、彼女の叔父がドゥラカの世話役を担っているようです。
ブリバシャ
ロマのコミュニティであるクンパニアには、組織のリーダーシップをとるブリバシャと呼ばれる人がいました。
【チ。-地球の運動について-】でも、ドゥラカがブリシャバと語り合うシーンがあります。
クンパニアの最年長であるブリシャバは、旅の方向を決めたり、結婚の斡旋を行なったり、時には裁判所の役割をになってきました。
ドゥラカも、地図を書くという大切な仕事を終えてから、やっと彼と話す権利を得ています。
ロマのコミュニティでは男尊女卑の思想が強いそうですが、本作のブリシャバは、随分ドゥラカを買ってくれているようです。
それでも、必要な分だけ稼ぎ多くを欲しすぎることをしないというロマの教訓の前では、ドゥラカの実力主義で稼ぎの優劣をつけるという提案は相容れないものだったようです。
教会との関係
【チ。-地球の運動について-】でも語られていますが、ロマ達はキリスト教徒として改宗されていました。
しかし他人の領土に滞在し、独自のロマニ語を使うロマ達は、各地で疎ましく思われる存在でした。
また、ロマ達の稼ぐ手段である、手相占いや薬草採取などは、異端審問で言及される魔女裁判にかけられてもおかしくない行為です。
定住せず不安定な生活に身を置くロマ達でしたが、決して多種族に劣る存在だった訳ではなく、ドゥラカのように優れた知能を持った人物もおり、現地の住人と円滑に関係を築く適応能力が高かったのではないかと推測されます。
ドゥラカとは葡萄という意味
第6集からの主人公であるドゥラカの名前は、ロマニ語で果物の「ぶどう」という意味があります。
ヨハネによる福音書15章で語られているのですが、キリスト教徒にとって蔓を伸ばし管理された良い実を結ぶぶどうの木は、良いキリスト教徒に例えられています。
そのため、ドゥラカの両親が熱心なキリスト教徒であり、その思いをこめて彼女にこの名前をつけてあげたのではと推測されます。
しかし、両親の思いとは裏腹にドゥラカは神様の存在を否定し、お金を稼ぐという信念に囚われてしまいます。
形式的にはキリスト教を信じているが…
ドゥラカが神様を信じなくなった原因は、紛れもなく叔父の存在がありました。
実は、ロマ達がキリスト教に改宗した要因は、滞在場所で上手く関係を築くための手段であったという説も存在します。
日常生活において、教会と仲良くしておいた方が好都合だということは、立ち回りの上手いロマ達にとって分かりきったことだったのでしょう。
実際【チ。-地球の運動について-】でドゥラカの叔父は、アントニ司教に酒の隠し場所がバレてしまった時は、今までコツコツ盗んできた酒を早々教会に渡してしまいます。
さらに、自分の命が危ういと感じると、姪であるドゥラカも交渉材料に使ってしまいます。
このように、ロマ民族は立ち回りをコロコロ変えて、時には嘘なども使い移動民族として上手く生活してきたのかもしれません。
さいごに
【チ。-地球の運動について-】の三番目の主人公である、ドゥラカの民族背景についてまとめてみましたがいかがだったでしょうか。
神様を信じず、死への恐怖に怯えるドゥラカが、地動説と出会いどのように変わっていくかが楽しみですね。
本作では、ドゥラカは何度も危機的な場面に直面しますが、持ち前の頭の回転の速さで交渉をすすめていくのが後半の見どころでもあります。
気になったらぜひアニメや漫画で確認してみることをおすすめいたします。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
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