【チ。-地球の運動について-】で使われている聖書の引用についてまとめてみた!

【チ。-地球の運動について-】で使われている聖書の引用についてまとめてみた! アニメ化

2024年10月からアニメ放送が始まった、【チ。-地球の運動について-】では、神様の存在を信じる熱心な信徒達が登場します。

15世紀ポーランドでは、現在の日本のように便利なメディアもなく得られる情報も限られており、皆熱心に聖書の勉強をして知識や教訓を得ていました。

神様が作った世界が絶対だと信じられている世の中で、今までの通説を覆す「地動説」の研究や普及をするために、ラファウ、バデーニ、ドゥラカ達は奮闘します。

【チ。-地球の運動について-】は聖書を読んだことがなくても、天文学に精通していなくても、誰にでもわかりやすく物語に入り込める漫画になっています。

しかし、登場人物達が口にする聖書の引用を知ることで、【チ。-地球の運動について-】の物語をより深く理解できると考えました。

本記事では、毎週日曜学校に通っている著者が、【チ。-地球の運動について-】でたびたび使われる聖書の引用をまとめて解説してみました。

金持ちが天国へ行くのはラクダが針の穴を通るより難しい

【チ。-地球の運動について-】第6集では、『金持ちが天国へ行くのはラクダが針の穴をとおるより難しい』と、正統派の体制に不満をもらいます。

この言葉は、新約聖書のマタイ19章、マルコ10章、ルカ18章に書かれている聖句で、イエス・キリストがある青年に言い放った言葉でした。

ある時、イエスが人々に神の教えを説いていたいた時、金持ちの青年がイエスのもとにやってきて「どうすれば永遠の生命を得られますか?」と尋ねました。

イエスは青年に「戒めを守りなさい」と言うと、青年は「それは幼い頃から既に守っています」と豪語しました。

するとイエスは「それではあなたの財産を全て売り払い、貧しい人たちに施してあげなさい」と言いました。

青年はそれを聞いて、悲しみながら立ち去ったとそうですが、他人のために全てを施すことはできない自分は天国に行けないと思ったのでしょう。

イエスは全ての人々の罪が許されるように、自らの命を捧げて十字架に処されましたが、青年にはもちろんそのような勇気はありませんでした。

また、他の人よりもお金があり優位な立場に立っていた青年は、驕り高ぶった心を持っていたことを、イエスは知っていました。

このように、自分自身の生活に満足しているお金持ちが、天国に行くことは難しいですよとイエスは弟子達にいったのです。

手引きをしてくれる人がいなければどうしてわかりましょうか

【チ。-地球の運動について-】第6集では、ドゥラカは叔父にはめられて、アントニ神父達のもとに出頭させられてしまいました。

このままでは売られてしまうという危機に陥ったドゥラカでしたが、躊躇することなくアントニ神父に聖書の引用を使って説得を試みます。

聖書は、全ての聖句に章と節が付けられていますが、相当読み込んでいないとどこの章になにが書いてあるかパッと思いつくことができません。

記憶能力が高いドゥラカと、高い教養を身につけてきたアントニ神父の間だからこそできるやり取りでした。

残念ながらアニメでは、聖句の具体的な引用は避けられましたが、使徒8章31節の話は非常に興味深いお話です。

聖ピリポが神の導きに従って、エルサレムからガザへ向かう途中の道を歩いていると、ちょうどそこへエチオピア人の宦官がエルサレムへ向かうために馬車に乗ってやってきました。

神は聖ピリポに「馬車と並んで歩きなさい」と言ったので、そのようにすると、馬車の中で宦官がイザヤ書を朗読していたことがわかりました。

聖ピリポは「その聖句がどのような意味なのかわかりますか」と聞くと、宦官は「手引きをしてくれる人がいなければどうしてわかりましょう」と言い、聖ピリポを馬車の中に招き入れました。

二人は、馬車の中で聖句について語り合い、神様の教えに感動した宦官は聖ピリポから洗礼を授けてもらったそうです。

このように、どのような立場の人でも、キリスト教に改宗する権利を持っており、膝を突き合わせ親しく聖句について語り合うべきだと聖書には書いてあります。

ドゥラカも、知識量はアントニ神父に匹敵していることをアピールし、まずは対等な立場で話し合ってくれるようにこの聖句を引用したのかもしれません。

神は”この世にある悪を善に変える”

【チ。-地球の運動について-】第七集では、ヨレンタかドゥラカに大切な手紙を託した時に、創世記50章の聖句を引用しています。

これは、エジプトに売られたイスラエルの12部族のうちの一人であるヨセフが発した言葉です。

ヨセフは、イスラエル(ヤコブ)の末の息子であり、他の兄弟よりも父親に気に入られて育ちました。

さらにヨセフは自分の兄達に「あなた達が私の前でひざまずいているのを夢にみた」と言ってしまったことで、兄弟達は怒ってヨセフをエジブトの隊商に売りつけてしまいました。

しかし、ヨセフには夢見の才能があり、王様が見た夢を飢饉の前兆だと解き明かしたことで、エジプトの宰相にまで出世することができました。

飢饉はヨセフの兄弟が住んでいる場所にも同様に起こり、兄弟達はエジプトの宰相であるヨセフの元に食べ物を分けてもらうためにやってきました。

ヨセフが以前夢で見た通り、兄弟達はヨセフの前に跪きました。

ヨセフは自分の身元を明かし、危篤であった父の元へ向かい、そして驚き慌てる兄弟達に「神は”この世にある悪を善に変える”」と言いました。

たしかに、兄弟達が父親から特に愛されたヨセフを疎ましく思い、エジプトに売ってしまったのは悪いことでした。

しかし、ヨセフがエジプトに来たことで神様のお告げを伝え、飢饉から多くの人々を救うことができました。

ドゥラカはヨレンタと話し合う前に、レヴァンドロフスキが自分の妹を亡くしてしまったと言う悲しい話を聞きました。

また、ヨレンタは既に自決の意思を固めており、どう考えてもこの世の全てがついていない、神様なんていないのではないかと思うほど酷いことばかりが起きます。

しかし、神様はその全てのことが必要だと知っていて、長い時間をかけて悪かったことを良かったことに変えてしまうのだと聖句を用いて、自分自身に言い聞かせていたのかもしれません。

ヨレンタは異端解放戦線に属していても、神様の教えを大切に守ってきたことがわかります。

女は黙って学ぶべき

【チ。-地球の運動について-】第3集では、ピャスト伯が『女性は黙って学ぶべき』だとヨレンタに話していますが、これはコリント人への第一の手紙14章34節の引用です。

現在の価値観ではなかなか受け入れられない聖句かもしれませんが、約2000年前に人々の統治をするためには必要な教えだったのかもしれません。

実はこの聖句に続く言葉は、『もしも何か学びたかったら夫に聞きなさい』と書かれており、学ぶこと自体は禁止されておらず、突発的な言葉で恥をかかないようにという配慮もあるように感じます。

聖書の解釈はやはり難しいものですし、もしも間違った解釈を突発的に発言してしまった場合、その女性はコミュニティから迫害される危険も孕んでいます。

しかしながら、女性とはっきりと名指ししてしまったことで、女性が学ぶ権利を抑え込んでしまったことは罪深い行いだったと言えます。

ヨレンタに女性が差別された歴史について話すピャスト伯
引用:魚豊「チ。-地球の運動について-」小学館

さいごに

【チ。-地球の運動について-】で用いられた聖書の引用について解説してきましたがいかがだったでしょうか。

登場人物達が、地動説を探究しながらも、聖書の教えを重視していたことがわかりますね。

最後まで読んでくれてありがとうございました。

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